そのひとが「かわいい」と思ったものが「かわいい」。その自由度に惹かれています。

J-WAVE『Samsung SSD CREATOR'S NOTE』
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“いま”を代表するクリエイターをゲストに迎え、普段あまり語られることのないクリエイティブの原点やこれから先のビジョンなど、色々な角度からクリエイティビティに迫る30分。J-WAVE(81.3)毎週土曜日夜21時から放送。
水野:今回のゲストは、KAWAII LAB.(カワイイラボ)総合プロデューサーの木村ミサさんです。

木村ミサ
1990年12月25日、群馬県生まれ。大学で上京し『Zipper』など女性誌の読者モデルとして活動。2014年から約3年間、アイドルグループ・むすびズムのメンバーとして活動したのち、2022年にアイドルプロジェクト・KAWAII LAB.(カワイイラボ)の総合プロデューサーに就任。地元・群馬県館林市での活動も行っており男女ともに支持を集める。
“やらされている感”を見せてはいけない

水野:最初にエンタメやアイドルに興味を持ち始めたのはいつ頃ですか?
木村:小学生のときは、もうクラスの全員が「モーニング娘。になりたい」みたいな時期だったので、自然に触れて育ってきて。本格的にアイドルファンとして、ライブに足を運ぶようになったのは、上京して大学生になってからですね。ももいろクローバーZさんに激ハマりしました。
水野:“アイドル”というジャンルに興味を持ったっていうのはなぜですか?
木村:まず、成長過程を一緒に応援していけることに惹かれました。あと、モーニング娘。のみなさんがちょうど自分よりもちょっとお姉さんくらいの世代だったので、憧れの存在としてみていて。「キラキラしていて眩しいな。いいな。マネしたい」と思っていましたね。
水野:明確に「自分もアイドルになろう」という瞬間はあったのでしょうか。

木村:正直、なかった気がします。ただ、アイドルが好きだったので「アイドルと関わるお仕事がしたい」とはずっと思っていて。最初から裏方というか、アイドルを作り上げる仕事がしたかったんです。そのなかでアイドルになるという選択肢をいただいて。アイドルが何を考えて、どうやってファンの方たちとライブを作り上げるかは、自分自身がアイドルにならなければわからなかったことなので、やってよかったですね。
水野:応援しているだけだと、見えなかったのはどういうところですか?
木村:応援しているときは、一方通行な気がしていたんです。「自分が応援することによって、その子たちが輝けばいいな」という願望を抱きながら、こちらだけが幸せにさせてもらっている。でも、実際にアイドルをやってみたら、応援してくださる方の存在が自分のエネルギーになって、ステージに立てることに気づきました。一方通行ではない相思相愛の関係だったんだなと。
水野:その気づきは、パフォーマンスにも繋がっていきましたか?

木村:もっとファンの方の思いに応えたいという気持ちが芽生えました。あと、アイドルは“みんなが同じほうを向かないと成り立たない仕事”だということも感じました。自分がやりたいようにやるだけではダメ。逆に、スタッフさんの言いなりでもダメ。いちばん見せてはいけないのは、“やらされている感”だなと思ったんです。だから、その塩梅を自分のなかで見極めていくことも大変でしたね。
水野:プロデューサー側になって、アイドルの方々とはどのようにコミュニケーションを取っているのでしょうか。
木村:アイドルって、セルフプロデュースではないからこそ、難しいんですよね。誰かにプロデュースされることで、活かされるよさがある。とはいえ、パフォーマンスをするのは本人たちなので、どれだけ本人たちが共感して熱量を届けられるかという点も大切で。楽曲のすべては理解できなかったとしても、「この部分だったら自分と置き換えて、伝えられるかも」という部分を見つけてもらえるように意識しています。
水野:それを見つけてもらうことが難しそうですね。
木村:そうですね。自分が毎日ずっと一緒にいられるわけでもないですし。だからこそ、なるべく多く会話をしたり、言動から好きなものをチェックしたりして、そこから得たものを一生懸命、拾っています。
気づくための材料を伝える

水野:アイドルになるひとの、どういうところを見ますか?
木村:パッって会ったとき、自分が惹かれるかどうか。その直感は大事だなと思います。あと、結果的にはやっぱり熱量ですね。KAWAII LAB.でいえば、どれだけアイドルになりたいか、どれだけアイドルになるために真摯に向き合っているか、という点をよく見るようにしています。別に完璧にできることを求めているわけではないんです。たとえば、オーディション期間にいろんな課題があるなかで、どれくらい成長したか、とかが重要で。
水野:成長の幅が大きいほうが可能性を感じられますか?
木村:そこは難しいところです。“もっとその子の話を聞きたくなってしまう感覚”にこそ、可能性を感じるというか。アイドルは、誰かに興味を持ってもらって魅力を届けるお仕事だと思うので、まずは私自身が興味を持てるかどうか、かなり意識しています。“愛され力”が大事なんですよね。

水野:個性はどのくらい考えますか?
木村:KAWAII LAB.は、個性を大事にしているので、それぞれの愛され力があると思います。自分は昔、あまり個性がないことが悩みだったんです。アイドルの子たちも、「私の強みは何ですか?」と訊いてくることが多い。でも、自分の意識していないことが、意外と個性だったりするんですよ。個性は、誰かに見つけてもらって、広げてもらえるものでもある。だから、「その子の見えないよさを表でどう伝えるか」と、考えることも多いです。
水野:「あなたの魅力はここだよ」と、どのように伝えるのでしょうか。
木村:自分で気づくしかないと思っているので、気づくための材料を伝えることを大事にしています。自分の意見として、「ここはこうしたらいいかもしれないね」という提案はするけれど、そこからどう行動するかは本人次第なので、本人に委ねて様子を見る。すると大体、「ここをファンの方が褒めてくれました」と報告してくれるんです。「こうしなさい」と言われても、自分が納得できていないことはできないじゃないですか。
水野:いきものがかりでいうと、吉岡はいろんなひとの意見を聞くことによって、どんどん愛されていくタイプなんですよ。もともとの性質で。逆に僕は、とにかくひとの言うことを聞くのが大嫌い。「自分で考えた」という納得を通らないとダメなタイプ。そんなふたりが合わさっているから、うまくいっているのかもしれません。ただ、僕みたいなタイプの人間を、自立に繋げていくことってなかなか難しそうですよね。
木村:たしかに。自分で納得できないと進めないタイプの子には、“自分事にさせていく”ことを大事にしているかもしれません。「これとこれとこれで考えているんだけれど、どう思う?」という訊き方をして、一緒に考えてもらいます。すると、本人の意見もちゃんと入った上で決まっていくので、最初は意見が違ったとしても、折衷案としてまとまることが多いんです。
水野:ひとに応じてコミュニケーションをフィットさせていくって、難しいことですよね。なぜそれができるようになったのでしょうか。

木村:いろいろ経験するなかで、自分をプロデュースするより、他者をプロデュースするほうが好きだし、得意だと気づきました。もともとアイドルをやっているときも、「この子はこの立ち位置でこうしたほうが、グループにとってよくなるんじゃないか」と、脳が勝手に考えてしまうタイプだったんです。逆に、自分のこととなると何もできなくて、「もう好き勝手してください」という感じで(笑)。極端なんですよね。
水野:プロデューサー・木村ミサという存在を「こうしていきたい」みたいな視点はあるんですか?
木村:あんまり考えたことがないかもしれません。まわりの方から、「プロデューサーとして、こういう見え方のほうがいいから、こうしていったら?」と言われたら、「そのとおりにします」みたいな。クリエイターやアイドルに対しては、自分の意見を言えるタイプなんですけど、自分自身のことは本当にわからないんですよね。
水野:自分に興味は向きますか?
木村:趣味や好きなことはあるんですよ。ひとつひとつに熱中してしまうくらい。たとえば、私はカレーが大好きなんですけど、遠征に行ったら必ずカレーを食べますし、カレー屋さん目的で地方に行くこともあります。だから、オタク気質なんでしょうね。自分の生活を豊かにしてくれる何かに対して、熱くなるタイプです。
“よりリアルに共感できる”という点が強み

水野:木村さんは、SNSでバズる音のムーブメントをたくさん生み出されています。あれはどのように考えているのでしょうか。
木村:“自分が一度聴いたあとに、口ずさみたくなるか”という点を意識しています。私自身、今のアイドルたちに比べたら、SNSネイティブ世代ではないと思うんですよ。でも逆に、そんな私が聴いたときに、「お!」と思えることは大事だなと。
水野:SNSネイティブ世代ではないひとにこそ、目を引くようなポイントが大事なんですかね。
木村:そうですね。スタッフの子たちはわりと若いので、コアなことをしても伝わってしまう。そうではなくて、私より年上で、「おじさんにはわからないよ」とおっしゃるような方にこそ、試しで聴いていただきたいんです。そのときに、「わからないけれど、なんかよさそうだね。アツいね」って言ってもらえることが大事だなと思います。一方で、若い子の「これは絶対にいい」という感覚も信じますし。まわりの意見をすごく聞きます。
水野:子どもの反応も見たりしますか?
木村:今、私の子どもが2歳なんですけど、その反応はものすごく見ます。
水野:うちにも小学4年生の子がいるんですけど、すべての流行がそこにありますね。
木村:本当に今の小学生ってすごいですよね。

水野:先日、「パパさ、サカナクションって知ってる?」と言われてビックリしました。「夜の踊り子」を歌いまくっていて。
木村:すごい。世の中の流行は小学生が広めているんでしょうね。M!LKの「イイじゃん」も、姪っ子が「小学校でめっちゃ流行っているよ」と言っていましたし。それこそKAWAII LAB.のCUTIE STREET「かわいいだけじゃだめですか?」も、「学校で流行っている」と言われて、「そこに響いた!よかった!」と思いました。
水野:KAWAII LAB.という名前にも含まれていますが、「かわいい」とは木村さんにとってどういう存在ですか?
木村:変幻自在の言葉だと思いますね。「かわいい」の前後にあるものによって、「かわいい」の持つ意味合いも変わってくる。あと、私の所属する事務所・アソビシステムは原宿にあって、私もわりと原宿のカルチャーに触れて育ってきたんですけど、原宿の「かわいい」カルチャーは、多様性を認めてくれるんです。そのひとが「かわいい」と思ったものが「かわいい」である。そういう「かわいい」の自由度に惹かれています。
水野:木村さんが「かわいい」を扱うとき、どういうところにご自身の個性が出ると思いますか?
木村:KAWAII LAB.は、共感性を大事にしています。私がアイドルの子たちと同性なので、私とアイドルが共感できるものは、世の中の女性たちも自然と共感しやすいものなのかなと思っていて。今までのアイドルって、理想や憧れ、ロマンを抱かれるような存在で、私はそういう面もすごく好きです。ただ、自分がプロデュースするにあたり、「私ができること」を考えたとき、“よりリアルに共感できる”という点が強みなのかもしれないなと。
水野:アイドルを応援するときに、同性の同世代の仲間から刺激を受けるような感覚もあるというか。

木村:そうですね。「頑張ったら私もこうなれるかもしれない」と思える、少し身近な存在。SNSがこれだけ盛んになった現代ならではの距離感ですよね。「もしかしたらコメントが返ってくるかも」とか、「“いいね”をくれるかも」とか、昔はなかったようなファンの方の喜び方があることも意識しています。
水野:これから挑戦してみたいことはありますか?
木村:何かひとつというよりも、まだ目指したいもの、やりたいことがたくさんあります。もっと海外に進出できたら嬉しいですし、「日本のアイドルって、こんなにすごいんだよ」って、より魅力を伝えていきたい。あと、「アイドルでもできる」とか、「アイドルだからこそできる」とか、アイドルの可能性を広げていきたい。アイドルの価値をもっと上げられるようなプロデュースをしていきたいなと思っています。
水野:ちなみに、つんく♂さんや秋元康さんのような、先輩アイドルプロデューサーの方々からは、どんなふうに言われているのでしょうか。
木村:「木村さんがやりたいと思って作るアイドルが正解だから、それを貫いてほしい。好きなようにやっていい」って。なんて心が広いんだろう、と思います。私にとっては本当に憧れの存在で、つんく♂さんや秋元康さんがいらっしゃるからこそ、KAWAII LAB.もできたわけですから。
水野:脈々と受け継がれているものもあるのかもしれませんね。
木村:根底にある気持ちは一緒だと思います。アイドルを輝かせることを、第一に考えていらっしゃって、メンバーひとりひとりのことも、すごくよく見てくださっている。素晴らしい方々なんですよね。
水野:では最後に、これからクリエイターを目指すひとたちにメッセージをひと言お願いします。
木村:“好き”という情熱は裏切らないし、クリエイターとして何かを作る原動力になります。もしも今、自分の好きなものがあったら、その熱量を大事に高めていってくれたら嬉しいなと思います。

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文・編集:井出美緒、水野良樹
写真:北川聖人
メイク:内藤歩
番組:J-WAVE『Samsung SSD CREATOR'S NOTE』
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