『Samsung SSD CREATOR’S NOTE』YOSHIROTTEN

“こうである”ということはない、と言いたいのかもしれない。

J-WAVE『Samsung SSD CREATOR'S NOTE』
https://www.j-wave.co.jp/original/creatorsnote/
“いま”を代表するクリエイターをゲストに迎え、普段あまり語られることのないクリエイティブの原点やこれから先のビジョンなど、色々な角度からクリエイティビティに迫る30分。J-WAVE(81.3)毎週土曜日夜21時から放送。

水野:今回のゲストは、アートディレクターのYOSHIROTTENさんです。

Man wearing a black cap with white logo sits at a radio studio desk with microphone and headphones nearby.
YOSHIROTTEN(ヨシロットン)
1983年、鹿児島県生まれ。2018年に個展『FUTURE NATURE』を開催。2021年には「SUN」シリーズの制作を開始。2024年には、『YOSHIROTTEN Radial Graphics Bio』がギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催された。ファインアートから商業美術、都市文化から自然世界まで、幅広い領域を往来する。多くのブランドやミュージシャンのアートディレクションも担当。クリエイティブスタジオ「YAR(ヤール)」を率いて多様な仕事を手掛ける。

いろんなものを自分が受信している感覚

Person wearing large over-ear headphones speaks into a microphone at a studio desk, gesturing with hands over papers and notes nearby.

水野:最初にものづくりに興味を持ったのはいつ頃ですか?

YOSHIROTTEN:中学生の頃からですかね。見よう見まねでTシャツを作ったり、スケボーに絵を描いたり、壁に絵を描いたりしていました。それがものづくりの始まりだったのかもしれません。

水野:それがどのようにグラフィックのほうへ繋がっていったのでしょうか。

YOSHIROTTEN:最初からグラフィックでしたね。もともと音楽が好きで、14歳くらいのときにふと、「音楽に関わる仕事をしていきたい」と思って、グラフィックというものに出会ったんです。ジャケットデザインをやるひともいれば、洋服デザインをやるひとも、スケボーのデッキを作っているひともいる。それらがすべてグラフィックなのだと知って、「僕もグラフィックをやりたい」と思ったのがものづくりのきっかけでした。

水野:どうやって技術を獲得していったのでしょうか。

YOSHIROTTEN:勉強したというより、とにかくたくさん作りました。まったく自分に技術がない頃から、「こういうものが作りたい」というイメージは湧いていたので、そこに向かって作りまくっていった感じです。それを遊びのなかでやっていたことも、大きかった気がします。

水野:当時から、作品を他のひとにも見せていましたか。

YOSHIROTTEN:イベントのフライヤーを作ったりもしていましたし、わりと見せたいタイプでした。そもそも自分が「かっこいい」と思ったものを作って出していたから、その作品によって友だちができたり、その作品をわかってくれるひとと出会えたりすることは、嬉しかったです。それが今もずっと続いている感覚ですね。

水野:ものづくりをする上で、何をいちばん意識されていますか?

YOSHIROTTEN:自分は自然と対象を見ているので、特別な意識はしていないと思います。たとえば、岩を遠くから見ると、岩の形だけではなく、岩に映っているもの、当たっている光、いろんなものを自分が受信しているような感覚で入ってきます。

水野:受信して、それを形にすることは、自然にできるものですか?

Three people wearing headphones sit around a recording table with microphones, papers, and audio equipment in a studio.

YOSHIROTTEN:そうですね。「ここが素敵だな」と思ったところや、気づいたことを伝えるために、デザインに落とし込んだり、作品に変換したりしています。デザインの仕事とファインアートの活動は、入り口は違うけれど、そういう出口は近いものかもしれません。

水野:デザインの場合、クライアント側がいますよね。どのように向き合われているのでしょうか。

YOSHIROTTEN:「お任せします」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、クライアントさんが僕に依頼してくださっている時点で「彼に頼んだらこうなるかもしれない」という想像をしていると思うんですよ。だから、最初の打ち合わせで出てくる言葉から、そのイメージを受け取ることが多いです。僕に依頼してくださった理由を、自分なりに考えるというか。お題をもらって、100倍にして返したいという気持ちでやっていますね。

水野:相手のイメージからズレる恐怖はありませんか?

YOSHIROTTEN:恐怖はないですね。一案だけではなく、いくつか出しますし。そのなかで、「どれも喜んでくれるだろう。でもいちばん選ぶべきはどれか」ということを話し合っていきます。そのほうが一緒にやっている感じがすると思うので。

水野:クライアントがいることで、「そのテーマは自分では考えつかなかった」みたいなこともありますよね。

YOSHIROTTEN:音楽の方だったら、まずは曲があったり、アルバムコンセプトがあったり、僕と出会う前に決まっているものがあるじゃないですか。それを受けて、できることを考えるので、そういう意味では自分を広げてくれます。自分の想定外のところからお題がやってくるのが、クライアントワークの楽しさですね。

“言葉にできないぐらいの感動”に惹かれる

Four people wearing headphones sit around a long table in a recording studio with microphones and audio gear, a wall clock visible behind them.

水野:YOSHIROTTENさんが、様々な作品を解説されている映像も拝見しました。どれぐらい言語化するものなのでしょうか。

YOSHIROTTEN:言葉ではまったく伝えられなくて。多分、その映像ではかなり頑張っているんだと思います。伝えないのもよくないと思うので、できる限りは言語化しますが、そもそも“説明がいらないもの”でありたい。見て感じてもらって、その先で、僕が発見したことや伝えたいことに行き着くことができる気がしています。逆に、それが実現できないものは作りたくないですね。

水野:何にいちばん惹かれますか?

YOSHIROTTEN:まさに、“言葉にできないぐらいの感動”ですね。誰かの作品や自然、音楽、いろんなものに対して生まれるじゃないですか。そういうものに惹かれるし、そういうものを目指しています。だから、「言語化できないほど感動的なものになっているかどうか」が、作品を世に出すときの自分の最初の基準です。

水野:ご自身のなかで、基準を超えるものと超えないものの差は何でしょう。

YOSHIROTTEN:僕は二軸なので、いろいろありますが、デザインでいうと、余計なものがそぎ落とされているかどうか。なるべく「何を伝えたいのか」だけにしていくことがポイントだと思います。アートは、より自分自身に潜り込んでいったり、思い出すものがあったりするかどうか。まずは自分が感動したいですね。

水野:どれぐらい他者を意識していますか?

YOSHIROTTEN:まず、見せるための“場所”があるので、その空間をどうつくるか。「作ったものを見てほしい」とか、「一緒にそこで遊んでほしい」という前提で空間を作っています。たとえば、渋谷のクラブをデザインしたときには、その場所に毎晩来る100~200人に、感動を与えられるベースの場所になっているか考えましたし。1万人規模の展覧会だったら、僕も彼らも見たことのない光景に向かうのかもしれないし。どれくらい他者を意識するかの基準は、その都度、変えている気がします。

Man wearing black shirt and AKG headphones speaks into a microphone in a studio; another person wearing a face mask sits in the background.

水野:また、YOSHIROTTENさんは作品のなかに、自然を取り入れることが多いですよね。

YOSHIROTTEN:僕の作品は「光」がひとつのテーマなんです。この世界は可視光線で見えているけれど、宇宙にはいろんな光の線があって、違う光の線を通すと、見え方が変わったり、見えなかったものが見えてきたりする。それは、僕が子どもの頃から感じていたことで。「見えているものって、本当にこうなのかな?」みたいな。つまり、“こうである”ということはない、と言いたいのかもしれません。だから、ずっと見てきた自然を新しい形で伝えてみたいと思ったんですよね。

水野:山下達郎さんの「SPARKLE」のMVも拝見しました。音楽からどのように作品づくりをされていくのでしょうか。

YOSHIROTTEN:僕は、音楽を聴くと色と形が映像のように出てくるので、それを描く感覚ですね。そのときには、チャンネルを切り替えるんですよ。今は止めていますけれど、たとえば流れているバックミュージックからも、見ようと思えば見えます。

水野:おもしろい。

YOSHIROTTEN:そこから、「こういうMVにしませんか?」とか、「こう思ったから、こういうジャケットはどうですか?」と提案すると、納得してもらえることが多いので、作り手の感覚と離れてはいないのかなと思います。音楽はもう同時通訳みたいな感覚です。流れている曲に対して、僕は無心で手を動かしていて。気づいたら40~50個くらい作っていることもありますね。

ここで自分が何を見たいか

Person's hands fold a small card over papers on a cluttered desk with documents and office tools nearby (scissors, rubber band).

水野:変な質問ですが、作っているときにはどこを見ていますか?

YOSHIROTTEN:パソコンで作っているので、画面のなかの世界にだけいるんですよ。そのなかで、「今の状態はイヤだ。かっこよくなるように変えよう」とか、「最高なものができている」とか、状態をずっと探っていて。そして、「最高なものができた」と思えたら保存して終わり。そういうふうにして、どんどん作っていきます。

水野:ある瞬間に何かがピタッと決まるんですね。

YOSHIROTTEN:そうです。「SUN」シリーズでは、365日毎日描くというプロジェクトをやっていて。コロナ禍だったので、誰もいないスタジオに行って、制作を始める。すると、感覚的にパッと数分で終わることもあれば、数時間かかって、「ああ、これだ」と終わることもありました。時間で決めることはありません。「終わった」と思うときが、終わりなんですよね。

水野:完成がない気がするんですけど。

YOSHIROTTEN:でも、あるんです。その都度あります。水野さんは完成がないですか?

Man in a black shirt speaks into a microphone in a recording studio, headphones around his neck.

水野:完成したはずなのに、ひとが聴くと変わっていく感覚はありますね。

YOSHIROTTEN:たしかに。あと、何回も何回も聴くと変わりますよね。

水野:そうなんです。作りながら何度も聴くので、その最中にも変わっていきますし。昨日と今日の自分では、体調や気分の違いもあるじゃないですか。だから、変化の瞬間も粘土のように織り込んでいく感覚なんですよ。それで、「どの自分でもよいと思えるもの」を作る。すると、まったく違う感覚のひとが聴いても、どこかよいと思えるはずだろう、と自分の頭のなかでまとめていくというか。

YOSHIROTTEN:最初に目指していたものと、最後に行き着くところはわりと変わりますか?

水野:最初に見えたときは100点満点なんですけど、その100点を具現化する力が自分にはないことに気づかされる瞬間がずっと続くんですよ。僕が選んだことによって、100点が98点になるみたいな。それをなるべく減らさないように作っていくことが多いかもしれません。すべての時間や情報を、ひとつにまとめなければならないところが難しいですね。

YOSHIROTTEN:音楽ですもんね。

水野:それが音楽のよさでもあり、逆に取りこぼしてしまうものもあるんだろうなと思います。だからこそ、「SUN」のように、毎秒毎秒変わる自分の感覚のピタッと来るところを、写真のように押さえて作品化できることが、羨ましく映りますね。しかも、あとから振り返って、変化もわかる。生きていることを感じられる要素ですよね。

YOSHIROTTEN:僕は、コンピューターの前で作ったものが、完璧に自分で作り上げた、いちばんピュアなものです。でも、そこから派生して、本や映像のような空間に行ったときには、いろんな方たちがそこに入ってきて、みんなで作っていくわけじゃないですか。だから、全コマが自分にとっての最高の積み重ねではなくていいんです。自分が抜群によいと思っているものを素材に、みんなで遊んでもらっている感覚だなと思います。

水野:今、いちばん興味を引かれるものは何ですか?

YOSHIROTTEN:毎日、ブラックホールとか、地球、宇宙、東京の地下に眠る関東ローム層の土、などの本を読んだり調べたりしながら、作品づくりに向き合っています。

水野:どこに惹かれるのでしょうか。

YOSHIROTTEN:先ほどお話したような、「見えないけれど、何かある」というところですね。星が生まれてきたり、超新星の爆発が起きて、そこからブラックホールが現れたり。今年の秋に、東京で大規模個展をやるんです。そのために今、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と一緒に作っていて。XRISMというX線を通して、ブラックホールを観測している研究機関があって。そのデータを使わせていただいて、作品に起こすんです。

Exhibition poster with orange Japanese title on the left and a blue space-scene on the right, dates 2026–27 and TOKYONODE logo at bottom left.
ヨシロットン展 彼方との交信BEYOND EARTHKey Image

水野:ものすごく楽しそうですね。

YOSHIROTTEN:宇宙のことって難しい話も多いのですが、それをできる限り勉強して理解しながら、自分なりに伝えていきたいなと思います。科学とはまた少し違って、「もしかしたら、こういうこともあるかもよ」というような入り口で。美しいもの、神秘的なものをメインにした展覧会に今、向かっていますね。

水野:展示会で、ご自身の作品がたくさん並べられるって、どういう感覚なのでしょうか。

YOSHIROTTEN:嬉しいですね。展示会を行なう場所が決まって、空っぽの会場を見たときに、「ここに何を置きたいか。ここで自分が何を見たいか」というところに向かっていくんですよ。光の入り方とか、建築との共鳴とか、実際に行ってみないと思いつかないこともあって。どんな場所でもまずは、「自分が見たいから」という気持ちが大事ですね。

水野:では最後に、これからクリエイターを目指すひとたちにメッセージをひと言お願いします。

YOSHIROTTEN:クリエイターを目指す方は、おそらく“なりたい自分”を想像していると思います。それを実現するためには、とにかくたくさん作ること、たくさん見ること、そして、ひとに見せて伝えること、ですね。誰かと一緒にやってみるのもよいと思います。

Wall-sized grid of small, brightly colored screens displaying abstract graphics in a dark gallery, with visitors observing.
ヨシロットン展 彼方との交信BEYOND EARTHExhibition Plan
Gallery interior bathed in orange light; a large colorful abstract screen on the wall draws two visitors who stand and observe.
ヨシロットン展 彼方との交信BEYOND EARTHExhibition Plan

Samsung SSD CREATOR’S NOTE 公式インスタグラムはこちらから。

文・編集:井出美緒、水野良樹
写真:北川聖人
メイク:内藤歩
番組:J-WAVE『Samsung SSD CREATOR'S NOTE』
毎週土曜夜21時放送
https://www.j-wave.co.jp/

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