
J-WAVE『Samsung SSD CREATOR'S NOTE』
https://www.j-wave.co.jp/original/creatorsnote/
“いま”を代表するクリエイターをゲストに迎え、普段あまり語られることのないクリエイティブの原点やこれから先のビジョンなど、色々な角度からクリエイティビティに迫る30分。J-WAVE(81.3)毎週土曜日夜21時から放送。
水野:今回のゲストは、3DCGアーティストで映像監督のYUKARIさんです。

YUKARI
国内外のファッションビジュアル・ミュージックビデオ/ジャケット写真・アーティスト写真などを数々手がける、アートディレクター・映像監督・ビジュアルアーティスト。中国・上海で生まれ、イギリスとアジアの空気感が混ざった環境で幼少期を過ごす。その後、留学のため来日し、映像監督活動を本格化。活動の幅を広げ、グラフィックビジュアルのディレクション・制作を開始。“柔らかくも強い、矛盾性のあるビジュアル表現”を特徴とし、DIESELやH&Mのグローバルコレクション、EMPORIO ARMANIやPUMAのジャパンキャンペーンなど、ファッションブランドビジュアルを多数生み出している。
編集にいちばん個性が出る

水野:日本のカルチャーには、いつ頃から興味を持たれていましたか?
YUKARI:多分、中学生くらいからです。ViViやminaのような雑誌を買って、一般の方のスナップ写真を見たときに、「日本にはおしゃれなひとがいっぱいいるんだ」と思って。それ以来、日本はおしゃれな国という印象がずっとありました。洋服も好きなので、コーディネートを見るのが楽しかったですね。
水野:どこらへんから映像に入っていくのですか?
YUKARI:日本に来てからです。当時、私がモデルやYouTuberになりたいと彼氏(現・夫)に話したら、「出るだけじゃなくて、自分で映像を撮って編集してみたら?」と言ってくれて。そこから、編集ソフトを触り始めたら、ハマってしまったんです。それで表に出るのではなく、裏方の映像編集をやるようになりました。
水野:映像を編集することの何がいちばんおもしろかったですか?
YUKARI:パソコンオタクなんですよ。もともとパソコンをいろいろいじるのが好きで、エフェクトの付け方を研究したりするのが楽しかったんです。自分で撮った映像を加工して、どんどんかっこよくなっていくのを見るのがおもしろくて、夢中になりました。
水野:それがご自身の仕事になるという想像はされていましたか?
YUKARI:当時から強い信念を持っていて、やりたい映像はありました。でも留学生だったので、バイトをしながら制作していて。そんなとき彼に「中途半端になってしまう」と言われて。思い切ってバイトをすべて辞めたんですよね。彼は軽いアドバイスのつもりだったらしいのですが(笑)。無職になって、ひたすら自主制作を続けて、SNSに投稿していました。私は先のことを考えるより、「やりたい」と思ったら飛び込むタイプなんです。

水野:影響を受けた映像作家はいますか?
YUKARI:中国のドキュメンタリー映像が好きなんです。ファッションや広告の映像をたくさん見て、「こんな作品を作りたい」と思っていました。今も自主制作では、ファッションモデルにインタビューして、かっこいい映像を撮って、ナレーションを乗せて、そういうシリーズを何十本も作っています。
水野:ご自身の個性はどのように掴んでいったのですか?
YUKARI:編集にいちばん個性が出ると思います。撮りたいアングルや撮った素材のカット割りを考えていると、時間を忘れるくらいで。その積み重ねで、だんだん自分らしさが出てきた気がしますね。音ハメやエフェクトがぴったりハマった瞬間も本当に嬉しいです。やっぱり作っている最中がいちばん楽しいですね。
水野:アイデアはどこから出てくるんですか?
YUKARI:私は直感に任せるタイプです。編集も感覚でどんどん進めていくので、エフェクトの設定もぐちゃぐちゃです(笑)。数値を細かく決めるというより、そのときの思いつきで作っています。
スタイリングやヘアメイクの提案もセット

水野:MVの場合は、どこから考え始めますか?
YUKARI:多分、映像を作るなかでいちばん自由度が高いです。打ち合わせをして、キーワードや伝えたいことをもらって、そこから自分で広げていきます。たとえば、AimerさんのMVを作ったときには、楽曲が“切ない”雰囲気を持っていたので、ふたりの女の子のストーリーを作りました。ふたりは仲よく遊んでいたけれど、実はひとり存在しなかった、みたいな。曲を聴いていると、そういうストーリーが浮かびやすいですね。
Aimer 「あてもなく」 MUSIC VIDEO(アニメ「王様ランキング 勇気の宝箱」エンディング・テーマ)
https://youtu.be/PLCO7eIJHh8?si=Uf4BhI_WCqB-rifa
水野:広告の場合は、パッと見たときの美しさを求められたりもしますよね。そういうときには、どのようにビジュアルを作っていくのでしょうか。
YUKARI:たしかに、広告にはフォーマットがありますね。でも、私はもともとCMをやるようなタイプではありませんでしたし、編集にも尖った要素が多いので、依頼が来るのは大体、「今回はブランディングを変えたい」というときなんです。「もう少し個性を入れたい」とか、「Z世代に向けたい」とか。だから、ビジュアルは綺麗に見せつつ、編集でCGを入れることを提案したり、新しい見せ方を意識しています。
水野:どうしてそんなふうに新しさを見つけられるんですか?
YUKARI:癖ですね。普段、新しい映像やビジュアルを見ると、「これ次に使えそう」と自然にインプットしています。勉強しているわけではなくて、ただ「かっこいい」「おもしろい」と思ったものを、自分の作品に取り入れたくなるんです。常に新しいものを入れたいんですよね。

水野:常に新しいものに対して、「あ、見つけた。おもしろい」という気持ちを保てるのは、なぜでしょう。
YUKARI:好奇心は強いのかもしれません。歩いているだけでも、道で変わった形の植物や珍しい柄を見つけて面白がったり、「今日の月、丸い!」と思ったり。ただ歩いているだけ、ただ生きているだけではなく、いろんなものを見て、すぐ口にします。だから、一緒にいるひとがビックリしますね(笑)。「何!?」「ただ月が丸かっただけ!?」みたいな。
水野:すごい。普通に過ごしていると、見逃してしまいそうなことじゃないですか。
YUKARI:よくパートナーにも、「子どものときで止まっている」って言われます。でも、その感覚は大事にしていて。中学や高校の頃は、クールに見られたくて抑えようとしていたこともありましたが、大人になるにつれて、逆にもう抑えるのをやめました。「私はこういう人間だ」って見せていくほうが、自分もまわりも楽しいだろうなって思うんです。
水野:日常で発見したものを、すぐに映像にできるものですか?
YUKARI:はい。実際に、手で月をつかもうとするシーンをMVで撮ったことがあります。普段気づいた小さなことが印象に残っていて、あとから企画を考えるときに自然と出てきますね。

水野:MVの仕事をされるとき、アーティスト自身の姿はどれぐらい想像されますか?
YUKARI:いい意味で、そのひとのイメージや以前のMVをいったん置いておきます。この曲のためだけに、新しく表現することを考えるんです。これまでとはまったく違う歌い方や演技を提案したりして。毎回、そういうふうにしていますね。
水野:アーティストとはどういうコミュニケーションを取りますか?
YUKARI:最初の打ち合わせでは、あまり質問などをするタイプではありません。必要最低限のことだけを聞きます。あと、私はダークなものを作りがちなので、相手に「今回はポップな感じがいい」という希望などがあるかどうかも確認しますね。そこからはもう企画を考えて、次の打ち合わせでは「こういうふうに撮りたい」と提案する感じです。歌い方や演技、スタイリング、ヘアメイクについてもすべて話していきます。
水野:スタイリングやヘアメイクのイメージあるんですね。
YUKARI:私はファッションの映像出身なので、そこはいちばんこだわりが強いですね。たとえば、幾田りらさんの「蒲公英」のときは、メイクで白い羽をつけて、たんぽぽっぽくしてもらったり。衣装にも羽のようなものを取り入れたり。スタイリングやヘアメイクの提案も、私にとってはセットだと思っています。
幾田りら「蒲公英」Official Music Video
https://youtu.be/nYT9RPNPlLI?si=nXpMVBWWwqa7gmMO
CGは“ありえない世界”を作ることができる

水野:YUKARIさんの作品には、ブランドのアートワークやコラボレーション作品も多数あります。ブランドのコンセプトとは、どのように向き合っていますか?
YUKARI:ブランドには崩してはいけないものがあるので、まずそこは守ります。その上で、たとえば「Z世代に刺さるものにしたい」とか、「職人にフォーカスしたい」とか、今回の目的を聞いて、私が思うカッコいい撮り方やCG表現を提案しています。そこはMVと一緒ですね。相手に守りたいものだけ聞いて、そこから自分らしさを入れていく。すると、私と一緒に作る意味があるかなと思っています。
水野:なぜ、ブランドのコンセプトに縛られすぎず、ご自身の個性を作品に入れることができるのでしょうか。
YUKARI:多分、相手に合わせる力がないんです(笑)。だから最初はいちばん尖った、自分らしいプランでぶつかってみます。それで、「これはやりすぎかもしれない」と言われたら、そこから削っていく。絶対に修正しない、みたいなことはありません。でも、一度は本気でカッコいいものを提案するんです。すると、パワフルな熱量を向こうも受け取ってくれて、「一緒にやってみたい」と言ってくれることが多くて。それが嬉しいですね。
水野:どうしてその勇気を持てるのですか?

YUKARI:忖度がないのかもしれません。いい循環になっている気がします。自分らしい作品を発信し続けてきたので、アーティストやクライアント側も、「こういう映像を作るひとだ」と理解した上で依頼してくださる。「このひとは普通のCMは作らない」と思ってもらえているのは安心ですね。
水野:2026年8月19日にリリースされるAKB48のシングル「好きish」のジャケットアートワークも手がけられています。中国出身のYUKARIさんからすると、日本のアイドル文化は、どう見えていますか?
YUKARI:中国にいたときと今とでは、少しイメージが変わりました。昔の日本のアイドルは、派手で可愛くてインパクトがある女の子。あと、同じ衣装を着た大人数のグループという印象だったんです。でも日本に来てからは、個性的で尖ったアイドルの方々もたくさんいる感覚ですね。
水野:アイドル作品でも、新しい表現を入れたくなりますか?
YUKARI:もちろんです。ファンの方にも、「こんなAKB48は初めて」と思ってもらえるものを作りたくて。今回も初めてCGを取り入れたビジュアルだったと聞いて、それができたことが嬉しかったです。

水野:CGは、ご自身にとってどんな表現ですか?
YUKARI:現実と非現実を組み合わせられるところが好きです。不思議なもの、かわいいもの、かっこいいもの、それらを表現したいとき、現実の美術だけではものたりなくて。たとえば、今回のハート形のレコードに座るような演出も、CGだから実現できました。CGの要素を加えることで、私が想像した“ありえない世界”を作ることができるんですよね。
水野:これから作っていきたいものはありますか?
YUKARI:AIも積極的に取り入れています。今まで技術的に難しかった表現が、自分ひとりでもどんどん試せるようになって楽しいです。AI-VFXを使って、ひとに羽を生やしたり、空中に浮かせたり。これからもどんどん挑戦していきたいですね。
水野:映像以外に興味が向いているものはありますか?
YUKARI:今は3DCGですね。AIも使っていますが、プロンプトを入力しても、抽象的な質感はまだ思いどおりに出せないんですよ。だからこそ3DCGでもっといろんなビジュアルを作りたいと思っています。自分の世界観を100%形にできる作品を作っていきたいです。
水野:これからもYUKARIさんの映像はどんどん変わっていきそうですね。
YUKARI:そうですね。でも一度、尖っているものやCG、VFXを突き詰めたからこそ、これからは原点に戻って、インタビューやドキュメンタリーのようなシンプルな映像も撮ってみたいです。一周まわって、ただの手持ちカメラで。技術に邪魔されない、素朴な感情で映像を作りたいと思っています。
水野:では最後に、これからクリエイターを目指すひとたちにメッセージをひと言お願いします。
YUKARI:作りたいものを100%思い切って作ることが大事だと思います。そうやってできたものが、いちばんカッコいい。今は誰にも評価されなくても、作り続ける。隠さず発信し続ける。すると、いつか必ず見つけてくれるひとが現れて、自分らしく表現できる場所につながると思います。

Samsung SSD CREATOR’S NOTE 公式インスタグラムはこちらから。
文・編集:井出美緒、水野良樹
写真:谷本将典
メイク:内藤歩
番組:J-WAVE『Samsung SSD CREATOR'S NOTE』
毎週土曜夜21時放送
https://www.j-wave.co.jp/
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