必ず“バズる”こと。数字がすべて。観られて初めてコンテンツ。

J-WAVE『Samsung SSD CREATOR'S NOTE』
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“いま”を代表するクリエイターをゲストに迎え、普段あまり語られることのないクリエイティブの原点やこれから先のビジョンなど、色々な角度からクリエイティビティに迫る30分。J-WAVE(81.3)毎週土曜日夜21時から放送。
水野:今回のゲストは、縦型ショートドラマクリエイター集団“ごっこ倶楽部”の監督・俳優の早坂架威さんです。

早坂架威(はやさか かい)
1996年10月2日生まれ、福島県いわき市出身。俳優・監督・脚本。2021年5月に、クリエイター集団“ごっこ倶楽部”を結成。『日常で忘れがちな小さな愛』をテーマに、縦型ショートドラマを作り続けている。再生数、フォロワー数、いいね数においてショートドラマカテゴリーの中で日本No.1を誇る。
「TikTok芝居」で求められるのは…

水野:お芝居や映像の世界に入っていかれたきっかけというと?
早坂:僕は夢がころころ変わるタイプだったんです。小学校の頃から高校3年生まではずっと野球をやっていたので、プロ野球選手になりたかったですし。親が教師の家庭だったので、学校の先生にもなりたかったですし。警察官にもなってみたかった。でも、「それって何に影響されているんだ?」と考えてみると、ドラマや映画を観て、「この役者さんが演じているこのキャラクターのようになりたい」というところだったんですね。
水野:なるほど。
早坂:役者という仕事は1回の人生で、犯罪者にもなれるし、学校の先生にも警察官にもなれるし、大人が学生にも戻れるし、いろんな人間を体験できるということに気づきまして。それで役者を目指し始めました。まず、芸能やメディアの学部・専攻がある学校に入学して。そこからすぐ養成所みたいなところに通って。
水野:自分に合っていると思いました?
早坂:合っているかな。正直、壁にぶつかるほどいろんな挑戦をできる環境ではなかったので、挫折したりへこんだりしたことも、あまりなかったんです。でも、やっているときは楽しんでいるし、我を忘れて夢中になることができる仕事だなと常に感じています。
水野:縦型ショートドラマのプロジェクトはどのように作られていったのでしょうか。
早坂:結成が約4年前。当時、コロナ禍で舞台やライブのようなオフラインの仕事ができなくなったじゃないですか。そのとき、昔からかわいがってもらっていた先輩に「新しいことを始めるから」と言われて。役者5人とカメラマン1人で結成したのが、ごっこ倶楽部でした。SNSを使って、自分たちが芝居できる場所を増やそうというのが始まりですね。
水野:当時はこれぐらい世の中に浸透すると考えていましたか?
早坂:発起人であり、今の代表取締役である多田智は、このイメージができていたみたいです。彼は、縦型ショートドラマというコンテンツが流行るムーブメントが来る、という確信を持って始めた。でも、僕を含め集められた役者4人はただ、「芝居ができる!ドラマが撮れる!」みたいな感覚でしかなくて。最初は「TikTokでショートドラマ? 芝居?」みたいな気持ちもありました。
水野:4年前でもTikTokの浸透率は今とはだいぶ状況が違いますし。

早坂:ダウンロード数もアクティブユーザー数もまったく違いましたね。縦型ショートドラマにおいては、ほとんどなかったですし。僕らが第一人者だった。だからこそ、「今だ!」という感じで。
水野:でも当時、「縦型動画がここからアツい業界になるんじゃないか」と挑戦しているひとも知っているのですが、軒並み失敗していて。ごっこ倶楽部のみなさんがこれだけ浸透している理由は何だと思いますか?
早坂:そもそも中国では当時、縦型プラットフォームアプリの快手(クワイショウ)やbilibili(ビリビリ)、Douyin(ドウイン)などが流行っていたんです。そして、多田は中国と日本のハーフだったので、中国で流行っているコンテンツはいずれ日本に入ってくるという未来を、これまでの 歴史からも見据えていた。そこのトレンドをいち早く日本でローカライズして、コンテンツとして当てられたのがいちばん大きい気がします。
水野:舞台でやるお芝居と、ショートドラマのお芝居とでは違いはありましたか?
早坂:まったく違いますね。僕らのなかで「TikTok芝居」というワードが流行りになるぐらい。舞台では、お腹に力を入れて声を張って、ステージ上からお客さんに届けないといけない。でもTikTokではデバイスで観ているひとたちに届ける芝居が求められます。たとえば、セリフの言い回しは短く。テンポも速め。あと、目線ですね。目線を微妙に変化させて次のカットに繋げる、とか。そういうことを役者も考えないといけない。
水野:たしかに、体全体を映すことも難しいですよね。
早坂:基本的に、映るのは胸から頭のてっぺんまでですね。寄りのカットとなると、動きも制限されますし、縦型ショートドラマではすべてがちょっとコンパクトになるイメージです。
水野:早坂さんの監督デビュー作『一寸の光陰』は累計数千万回再生を記録されたそうですね。実際、バズる瞬間はどのように感じるのでしょうか。
【短編映画:一寸の光陰(前編)】あなたならどうしますか?
【短編映画:一寸の光陰(後編)】あなたならどうしますか?
早坂:大体TikTokは、初動がいいと投稿してから約1時間で30万回くらい再生されて。そのまま1日かけてうなぎ登りに伸びていって、徐々に落ち着いてくるんです。『一寸の光陰』も最初の1時間で、「あ、これはバズったな」と。
水野:もちろんバズることは狙っていると思うのですが、「ここで驚いてほしい」とか「ここで引っかかってほしい」というところも、うまくハマっていく感覚ですか?
早坂:そうですね。脚本は多田が作っていて、僕は監督と編集をやったんですけど、今のショートドラマの作り方とは少し違うんです。この作品は、ごっこ倶楽部を始めた年の終わりに投稿していて。当時、僕らのグループ名は知られてきているし、ショートドラマのイメージもあるけれど、「スナックコンテンツだな」という印象が、観ているひとにとってまだ強かったと思います。だけど、僕は感動作としてちゃんとドラマを観せたかった。
水野:はい。
早坂:普段は僕ら、3秒と5秒で必ず事件を起こしたり、パンチラインを入れたりという点を意識しているんですね。でも『一寸の光陰』では、あえて役者の表情やカット割りを長く使って、この頃に流行り始めていた縦型ショートドラマの作り方の逆をいってみたんです。あと、曲とのマッチングもうまくいきました。それで結果的にフォロワーが15万人ぐらい増えましたね。
水野:早い段階でセオリーを壊しにいったのがすごいですね。でも俳優と監督って、立場がまったく違う気もしますが、その切り替えはすんなりできたのでしょうか?
早坂:作品に対する向き合い方としては、俳優も監督もあまり変わらないんですよね。
水野:すると、自分でお芝居をやっているときも俯瞰で見ている感じが多いんですか?
早坂:ああ、なるほど…! まさにおっしゃるとおりです。なかには、役に入り込む憑依型の方とかいらっしゃるけれど、僕は自分自身と役が半分ずつのイメージでお芝居するのがいちばん心地いい。やりやすい。夢中になりすぎず、自分のしたい表現をして、監督の表現したいものを取り入れられる、いいバランスなんですよね。
水野:それは気持ちいいんですか? 僕も俯瞰になるタイプだけれど、強みでもコンプレックスでもあって。
早坂:俯瞰で見ていると、50%の自分がいい芝居をしていれば、50%の自分がものすごく褒めてくれるんですよ(笑)。それで「俺、イケてる!」とノッてきて半分半分でやることができる。逆も然りで。イケてないときは、「ああ、ダメだ」って集中力が切れて、小手先でやり始めるときもあるかもしれない。
“選択しないスキル”を持っていた

水野:他の仲間たちとはどういうコミュニケーションをしているのでしょうか。
早坂:作る場では、もう絶対にクリエイティブファースト、コンテンツファースト。だから、「再生数まわすために、もっとここをこうしないといけないよね」みたいな制限はつけないといけない。つけられた僕ら演者側も、それをうまく消化しないといけない。あと、そこで意見を言うのは監督だけではありません。カメラマンさんもヘアメイクさんも、年齢も関係なく、みんな平等に同じ目線でクリエイティブのために発言をしていますね。
水野:フラットにものを言い合えるチームづくりって、意外と難しいと思うのですが、どうやっているのですか?
早坂:僕らの場合はシンプルです。監督もカメラマンも脚本家も役者も編集者もヘアメイクも衣装さんも、すべて自分たちの会社のメンバーなんですよ。みんなが同僚。だから意見しやすいのだと思います。本来、現場では外部のパートナーの方やさまざまな事務所、制作会社の方々と一緒に1つのチームを作りますが、株式会社GOKKOは自社だけで1つのチームを形成しています。そこがいちばんの強みじゃないですかね。
水野:お話を伺っていると、マルチに能力を持たないといけないようなクリエイティブだと思うのですが、あえてこれは必要だというスキルを挙げるなら?

早坂:難しいですね。でも僕は、“選択しないスキル”を持っていたかもしれません。とくに役者さんだと専門職性が強いというか、「俺は芝居しかやらないんだ」というひとが多い気がするんですけど。
水野:それが求められる感じもありますし。
早坂:僕はあえて、「いや、カメラも持つし、脚本も書くし、編集もやるし、監督もやる」と。「これしかしない」という選択をしなかったから、今この場所に立っていると思っていて。そこはエンタメを目指していくひとに、ここから求められる必要なスキルかもしれないですね。正直、それが今まで一緒にやってきた俳優仲間と自分とで少し違った特性でした。

水野:そんなたくさんのスキルを持っている方が、さらに欲しいスキルはありますか?
早坂:現実的じゃないかもしれないですけど、脚本を見たときに、その脚本で投稿した場合の再生数、どれだけ“バズる”かわかる能力が欲しいですね(笑)。僕らは必ず“バズる”ことに重きを置いていて、数字がすべて。「観られて初めてコンテンツ」ということを大事にしているので。
水野:バズる匂いはわかるんですか?
早坂:撮影して、映像が完パケして、投稿する前のタイミングで、「これはバズったな」とピーン!って見えるときはありますね。手応えは絶対ある。逆に下ブレはほとんどないかもしれません。TikTokのアルゴリズムのせいで若干まわりづらかったり、センシティブな内容で制限がかかってしまったりはありますが、クリエイティブの理由で予想を下回ることはあまりないですね。
水野:「数字がすべて」と言い切るところがものすごくカッコいいと思います。みなさんはどうやってその覚悟を決めていったのでしょうか。
早坂:僕らが役者で舞台をやるとき、1回の公演でよくて100人、10公演で1000人にしか芝居が届かない。みんな過去に“多くのひとに届かなかった”という苦い経験があるんですよね。だからこそ、自分たちのコンテンツが、コメント欄やいいね数、再生数、フォロワー数、という目に見える“届いた”という実感を得たとき、「この瞬間のために僕らはやっていたのかな」と気づかされたというか。
水野:ああー。
早坂:そこからは“バズる”というところに完全にシフトし、注力していきました。そこを前提に、自分のエゴや表現したいことを乗せていっても、届くひとには十分に届くし、やりたいこととのいいバランスも見つけられると信じているので。そういうものを見つけられたことが、僕らの何よりの財産ですね。
ひとが1分半のドラマを2周観る仕組み

水野:今、すごいスピードで次々コンテンツを生み出していかなければならないじゃないですか。どうやってアイデアを生みだし、作品の質を保っているのですか?
早坂:主戦場がTikTokやYouTubeなので、SNSでどれだけ敏感にトレンドを掴み、インプットするかが大事ですね。今のホットワードだったり、話題の楽曲だったり。ドラマの骨組みは自分のなかでできているので、そこにインプットしたものを組み合わせれば、延々とアイデアは浮かんできます。
水野:トレンドのワードなどは、常日頃からみなさんと共有されているのでしょうか。
早坂:会社では、連絡ツール内に「こんなトレンドがある」「こんなバズっている動画がある」といった情報をシェアする専用チャンネルがあります。そこに日々さまざまな情報を投稿し合っています。さらに、それをもとに脚本ができたら、10~20人ぐらいの目を通して、必ずフィードバックをもらってから撮影するというのも大事にしています。
水野:そのフィードバックで、何がいちばんキーポイントになりますか?
早坂:TikTokやYouTubeにはコメント欄があるので、どれだけそこに誘導できるか。それはものすごく大事にしていますね。ツッコミどころを用意することを大切にしているというか。
水野:そういうことなんですか。
早坂:一般的なドラマなら起承転結ですけど、僕らは“転”から始めていきなり事件を起こすんです。たとえば、水をかけられる。すると、「なんで水をかけられたんだ?」と最初の3秒キープ。そして第三者が現れて怒る。「あ、ここは浮気現場で炎上しているんだ」とわかって5秒キープ。そこからはある程度、ちゃんとドラマを観てもらって、没入感が出てきたタイミングでツッコミポイントを入れるわけです。

水野:すごい。
早坂:「こんなセリフの言い回しはないだろう」とか、「こんな理由で水かけないだろう」とか、中盤から後半あたりにわざと入れておくと、大体みんなコメントしに行くんですよ。その間に動画のキープ時間、占有率が長くなっていく。さらに、共感できるコメントを見つけて「いいね」したりして、気づいたら2周目に。そうやって必然的にひとが1分半のドラマを2周観る仕組みを作っています。
水野:ごっこ倶楽部のこれからの展開はどのようにイメージされていますか?
早坂:縦型ショートドラマを武器に戦っていきたいですね。この日本のコンテンツを世界に持っていきたいと思っています。僕たちは会社設立から3年目となる今年の2月に、縦型ショートドラマアプリ「POPCORN(ポップコーン)」をローンチしました。縦型のショートドラマの販売コンテンツ、今ここにいちばん力を入れたい。中編~長編で、30話~100話と続く大型の縦型ショートドラマを大量生産していく方向性にシフトして制作をしています。
水野:では最後に、これからクリエイターを目指すひとたちにメッセージをひと言お願いします。
早坂:やはり「観られて初めてコンテンツ」ということですね。これだけいろんなSNSが発達している世の中で、それを使わない手はありません。数字と、自分のやりたいことの心地いいバランスを探すことがいちばん大事。また、どれだけトレンドを追えるかも、今のクリエイターに絶対に求められているところです。そこを突き詰めていった先に、自分が表現できる場所が増えるのだと思っています。


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文・編集:井出美緒、水野良樹
写真:谷本将典
メイク:内藤歩
番組:J-WAVE『Samsung SSD CREATOR'S NOTE』
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