『Samsung SSD CREATOR’S NOTE』友成空

音楽はいくらやっても楽しい。常に逃げ道であり続けるもの。

J-WAVE『Samsung SSD CREATOR'S NOTE』
https://www.j-wave.co.jp/original/creatorsnote/
“いま”を代表するクリエイターをゲストに迎え、普段あまり語られることのないクリエイティブの原点やこれから先のビジョンなど、色々な角度からクリエイティビティに迫る30分。J-WAVE(81.3)毎週土曜日夜21時から放送。

水野:今回のゲストは、シンガーソングライターの友成空さんです。

友成空
2002年生まれの新世代シンガーソングライター。2024年1月に発表した楽曲「鬼ノ宴」、同年5月に発表した「睨めっ娘」がバイラルヒット。2025年10月に発表したTVアニメ『キングダム』第6シリーズエンディングテーマ「咆哮」が話題沸騰中。2025年11月に1st Album『文明開化 - East West』を配信リリース。作詞・作曲・アレンジだけでなく、イラストやアートワークまで全て自分でこなすマルチな才能の持ち主。

作ることが精神安定剤になっている

水野:最初に音楽に興味を持ったのはいつ頃ですか?

友成:小さい頃から音楽は好きでした。ディズニーのアニメーションが入り口だったと思います。そして7歳のとき、クラシックピアノを始めて、楽器を演奏するということに触れ、本格的に音楽好きになっていきました。

水野:ご自身が“作る側”になったタイミングというと?

友成:10歳ぐらいのときですね。僕は楽譜が読めなくて、クラシックピアノを弾くときに間違えてばかりだったんです。でも、クラシックのセオリーから外れたその間違った和音こそが、綺麗なものに感じて。それを繋げていたら、曲になっていった感じです。それからずっとインストで作っていて、高校2年生で歌ものを作り始めました。

水野:思春期で音楽を始めると、クラスの人気者になる方も多いですが、友成さんはどういうタイプだったのでしょう。

友成:僕は“音楽=モテ”だと思っていなかったタイプで。職人っぽく、ただひとりで作って、自分のSNSアカウントに上げる。でも、クラスメイトに見つかると恥ずかしいみたいな感じでした。それがあるタイミングで、クラスメイトに気づかれて。結構、褒めてもらえたんですよ。それからは、「褒められるならオープンにしてもいいかな」というフェーズに入っていきました。

水野:そしてデビューされて、現在は“友成空”という存在がかなり公のものになっています。高校時代からの数年間で、どのようにご自身を整理されていったのですか?

友成:高校時代はコロナ禍だったんですよね。だから、文化祭はオンライン開催で、ほぼ潰れてしまったようなものでしたし、軽音楽部にも入っていたのですが、ライブも中止でした。ひとに会えない、曲を直接聴いてもらえる機会もない。そうやって閉じ込められれば閉じ込められるほど、外に聴かせたい欲求が強くなっていった気がします。それで僕はデモテープをとある事務所に送ってみたんです。音楽の道すら目指してなかったのに。

水野:そうか、最初はプロを目指す感じではなかったんですね。

友成:そうなんです。音楽は趣味であり、それを仕事にするなんて夢物語だなと思っていました。でも、初めて出したそのデモテープが、なぜかプロの道へとご縁を繋げてくれて。思い返すと、閉じ込められていた期間が、逆に僕を公の場に押し上げてくれたのかもしれません。

水野:今、ご自身にとって音楽はどういう存在になっていますか?

友成:デビューしたばかりの頃は、今まで逃げ道だった場所が義務とか、自分の役目になっていくところに焦りを感じる瞬間もありました。でも今、4年目ぐらいで、「音楽はいくらやっても楽しい。常に逃げ道であり続けるものだな」と思っています。というのも、今年リリースした1st Album『文明開化 – East West』の制作期間がすごく楽しくて。自分はやはり作ることが好きで、作ることが精神安定剤になっているんだと気づいたんです。

水野:友成さんが音楽をつくったり届けたりするなかで、いちばんの快感を覚える瞬間はどこですか?

友成:快感の種類がまったく違うので、比較できないんですよね。瞬間最大快感みたいなものは、できあがったときがいちばんです。とにかく多幸感に満ちる。でも、それはパーティーのようで、終わってしまえば二度と来ない幸せで。一方で、曲が届いて感想や反応をもらえたときには、じわじわ心を温めるタイプの幸せを感じます。それぞれ異なる達成感がありますね。

水野:曲づくりは、何かを生み出す作業ですか? 何かをまとめる作業ですか? どういうイメージで作られているのでしょう。

友成:広げた風呂敷をぎゅぎゅっとまとめる感覚ですね。生み出してはいるけれど、どちらかというとまとめる作業なのだと思います。たくさんあるやりたいことを、1曲にまとめなければいけない。逆にアルバムだと、すごく自由に広げることができたからこそ、生み出している感覚が強くて、より楽しかったのかもしれません。

 “ひとりでやっている”という感覚はない

水野:友成さんの音源を聴いていると、ご自身の生活でインプットしたものを、どんどん作品に落とし込まれているように感じました。外のものを入れようという意識も強いのでしょうか。

友成:そうですね。あと、自分が今まで聴いてきた音楽にも、自分がまた気づいていないエッセンスがあると思っていて。新しく曲を作るとき、そういう音楽を思い出しながら、刺激を得ていることが多い気がします。

水野:今、とくに友成さんの世代の方々は宅録で、ゼロイチから曲をまとめ上げるところまで、すべて自分で完結されるじゃないですか。すると、ひとりの世界で留まってしまう不安はありませんか?

友成:怖さもありますが、時代が味方をしてくれている部分が大きくて。昔よりもトライ&エラーをしやすいんですよ。たとえば、デモをSNSにアップすれば、すぐに反応がある。僕はアンチコメントも喜ぶべきものだと感じていて。アルゴリズム外の、届くはずのないところまで届いている証拠なので。そうやって効果検証ができる。だから、きっと同世代のみんな、あまり“ひとりでやっている”という感覚はないんじゃないかなと思います。

水野:なるほど、そうか。SNSの環境があるからこそ、“ひとりでやっている”という感覚がないというのはおもしろいですね。

友成:「鬼ノ宴」という曲も、デモをアップしたら反応がよかったので、アレンジを加えずにそのまま出したんですよ。そういう意味では、いい時代になったなと感じます。なかなか正解は出せないけれど、ひとりでも日々、学びがある。ミックスも僕は本当に素人で、見よう見まねでやっているので、それを磨いていくために、聴いてくれたひとの反応がかなり大事になっていますね。

水野:聴き手の反応はどれぐらいのさじ加減で取り入れるものですか?

友成:基本的には、「自分は頑固でこだわりが強い」と思いながらやるようにしています。僕は、建築家の安藤忠雄さんを尊敬していて。安藤さんの展覧会に行ったとき、「デザインで指摘されたら、アドバイスどおりには変えない。だけど指摘されたポイントには、何か必ず改善の余地がある。そこは手を加えたり変えたりする」と書いてあったんです。僕もそれを実践しようと心がけていて。そういう取り入れ方をしているかもしれません。

水野:また、1st Album『文明開化 – East West』にも収録されている「咆哮」という楽曲は、TVアニメ『キングダム』第6シリーズエンディング曲です。ちなみに、オープニング曲「生きて、燦々」はいきものがかりが担当しておりまして。同じ『キングダム』というテーマをもとに曲を作った仲でございます(笑)タイアップ楽曲とは、どのように向き合っていかれますか?

友成:タイアップ楽曲に自分のカラーを混ぜ込めるタイプの方もいて、少し羨ましいのですが、僕はその作品に合うことだけを大事にしています。『キングダム』は、古代中国が舞台なので、そういう音の世界にしたいというところがスタートでした。だから、民族音楽を聴いたり、京劇の楽器の使い方やリズムを動画で観たりして学んで。そうやって新しいエッセンスが増えるんですよね。「生きて、燦々」はどのように作られたんですか?

水野:僕らの場合、少しずるくて。原作者である原泰久先生に直接お話を聞きました。

友成:それ、かっこいい!

水野:たまたま『キングダム』連載開始といきものがかりのデビューが同じ2006年で、昔から親交があったんですよ。だからこそ、原先生の熱意を形にしたくて作ったところがあります。友成さんがおっしゃったような、「この世界で鳴っている音にはこういうリファレンスがあるんじゃないか」と学んでいくスタイルは、逆に僕は取ることができなくて。よくもわるくも、作品のメッセージ性のほうにかなり寄ったなと思いますね。

友成:おもしろいですね。原先生の生きざまのようなところまで描かれた。

水野:原先生はずっと「群像劇だ」とおっしゃっていて。あれだけ戦争というものを描いているじゃないですか。ひとりのキャラクター、信や政だけでも表現しきれないって。たくさんの登場人物が生き死にを繰り返し、最後の最後に、「ああ、そういうことだったんだな。戦争をなくすためには、こういうことが必要なんじゃないかな」みたいなことがぼんやり見えてくるんじゃないかと。そういうことを先生が2時間くらい語られました。

友成:なんて貴重な。聞いてみたい。

水野:でも、『キングダム』連載開始の頃にはまだ幼稚園児だったような友成さんが、客観的に作品を見て、そこから何かを得ることも非常に大事で。それが「咆哮」に表れていることが、素敵だなと思います。友成空さんといきものがかりは、世代も作品との距離感もいい意味で違って。

友成:そう考えると、今回のオープニング「生きて、燦々」とエンディング「咆哮」って本当にいい組み合わせですよね。とても光栄です。

物理的に旅をしていきたい

水野:アルバムを出されて、初めての東名阪ワンマンツアーを開催されたということで。いかがでしたか?

友成:ずっとライブがあまり好きではなくて。自分の部屋に引きこもって音楽をやっているタイプなので、自分の姿かたちと一緒に、1回限りの舞台を人前でやることがすごくプレッシャーだったんです。でも、今回は楽しかったんですよね。やはり、1st Album『文明開化 – East West』がいろいろ切り開いてくれたなと。

水野:どうしてもステージ上では、友成さんの音楽だけではなく、友成さんの存在自体にも惹かれていくひとたちが増えていきますよね。ある種、自分という人間自体がエンタメにならざるを得ない瞬間もあるというか。

友成:そうなんですよね。そこはまだ経験を積んでいる最中で。舞台用の人格を作って出られる方もいますけれど、僕はそうではなくて。自然体でいることがいちばんだと思っているんです。だから、ずっとこのままなのかもしれません。でも、規模が大きくなっていくにつれ、何かを作らなければならない場面も増えていく気もしますし。僕はまだ知らない世界ではありますが、水野さんはどういう心持ちでライブをされているのですか?

水野:もうずっと悩んでいる。

友成:やっぱりそういうものですか?

水野:正直、人前に出たくないんですよ(笑)。僕はたとえ身近なひとにでも、「あなたってこういうひとだよね」と固定されることがものすごくイヤで。なぜかは未だにわからないんだけれど。でも、ステージ上はその連続じゃないですか。エンタメになるためには、「カッコいい」とか「素敵だな」とか思ってもらえるように、固定させていかなければいけない。だから自分の気持ちとかなり矛盾していて。

友成:ああ、なるほど。わかる気がします。

水野:エンタメとしてのキャラクターをどこか背負って、おどけて喋ったり、カッコつけてステージングしたりするんだけれど、「何をやっているんだろう」ってどこかで思っている。そういう気持ちをどうも処理できないまま、ずっと続けてきている気がします。

友成:でも僕は今、20年以上も音楽をやられている水野さんも悩まれているということを聞けたことが、いちばんよかったなと。こうして悩んだままでもいいんだなと思えました。

水野:これから、どういうふうに作品を作っていきたいですか?

友成:僕は旅が好きで。東京以外の場所で仕事をするのも好きなんですよ。だから、1st Album『文明開化 – East West』は“旅したい欲求”が詰まった作品になっていて。いろんな文化圏や時代のものを取り入れたつもりなんですね。それをこれからは実際、物理的に旅をしていきたいなと思っています。外国に行って、ひとに会って、そこで音楽を作る。そういうことを前からやってみたかったんですけど、最近とくにその思いが強まっています。

水野:海外で何をインプットしていくのでしょう。

友成:僕の場合、何かに触れた瞬間は、それがインプットだと気づかないことが多いので、すべてがインプットだと思っています。あとで何が素材として活きてくるかわからない。石ころを集めているみたいな感覚です。あと、会いたいひとに会うのがいいですね。振り返ると、ひとの好きなものって、音楽でも食べ物でもゲームでも、わりと好きになるんです。だから、ひとに会うということは、自分の好きなものが増えるってことなのかなって。

水野:友成さんは一貫して、自分の外側に対してひらいていますよね。そこに対するポジティブさが強い。

友成:出会ってきたひとがよかったんだろうなと思います。いいご縁があったからこそ、オープンになることができる。恵まれていますね。あと、すごく飽きっぽいところがあるから。違うことをやりたくなるし、自分が知っていることでは足りなくなる。それが大きいかもしれません。

水野:飽きっぽいことは、いちばん強い力だと僕は思います。

友成:水野さんも飽きっぽいですか?

水野:かなり。僕は今年で43歳になるんですけど、コツコツやることは諦めようと思いました。

友成:ああ、素敵な言葉。

水野:「コツコツやることが正しい」ってよく言うけれど、僕は小さい頃からそれができなくて、物事が続かなかった。でも、音楽は続けられている。その理由を考え続けて、ある瞬間に答えが出たんです。「曲づくりは短距離走なんだ」と。曲はどんなに長くても、1ヶ月ぐらいで形になるじゃないですか。それが僕の限界で。じゃあ、長距離走には耐えられないけれど、短距離走でどんどん前に進んでいこうと。最近、やっと思えたんです。

友成:「曲づくりは短距離走」って、いい表現。すごくわかります。僕も短距離ランナーですね。

水野:では最後に、これからクリエイターを目指すひとたちにメッセージをひと言お願いします。

友成:活動4年目の僕も、「クリエイターとは何か」と自問自答しながら音楽を作っている身です。そのなかで、今回も含め、年齢関係なく作っているひと同士で話すことが、こんなに自分にとって豊かなことなんだと実感します。他者が何を考えているのか聞くと、自分のこともわかる。自分の考えを言語化すると、未来に繋がる。それはとても素敵なことです。だから、ぜひ会話をしてほしいです。僕もどんどん会話をしていきたいですね。

Samsung SSD CREATOR’S NOTE 公式インスタグラムはこちらから。

文・編集:井出美緒、水野良樹
写真:北川聖人
メイク:内藤歩
番組:J-WAVE『Samsung SSD CREATOR'S NOTE』
毎週土曜夜21時放送
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