対談Q 石川佳純(元卓球選手)第4回

最高に研ぎ澄まされた時間は、必ず緊張していた

「勝負ができる準備が整ったな」って自己暗示

石川:水野さんがすごく緊張されるのはどんなときですか?

水野:やたら緊張していますよ。今日も緊張していますし。ちゃんと喋れるかなとか。最近、より緊張に弱くなってきましたね。緊張に対する強度って変わります?

石川:変わりました。今は激弱です。

水野:本当ですか! 競技生活が終わってからのほうが。

石川:選手のときは、毎日常にハイプレッシャーじゃないですか。でも今は普段がリラックス状態で、ずっと素の自分でいるので、緊張するときとの差が大きいんです。

水野:普段のご自身の状況が、緊張の強度に関わってくるんですね。おもしろい。僕、この春にツアーをやって。石川さんにも観に来ていただいたんですけど。今まで何度もライブをやっているし、キャリアも長くなってきて、わりと緊張しなくなった時期が長くなっていたんです。だけど、今回めちゃくちゃ緊張しちゃって。しかも、その緊張に負ける瞬間がすごく多くて。1回、本番前のリハーサル、ある曲でブラックアウトしてしまったんですよ。

石川:えー。

水野:ちょっと間違えたら、そのまま何も弾けなくなっちゃった。緊張で。そういう経験が初めてで、いまだにどう解決していいのかわからない。前はある程度、切り替えられたり、意識をリラックスさせて乗り越えられたりしたんですけど、それができなくなってしまって。で、最終的にご覧いただいた公演ではそんなに大きな失敗はしなかったんですけど、どうしたかというと、もう緊張の極限に持っていこうと思って。

石川:はい、はい。

水野:ライブ中に叫んでみたり。もう抗わず、むしろ思いっきり緊張しきってしまおう、という気持ちで乗り越えて。だから今回、緊張の極限で選手生活を送られていた方にお話を聞いてみたいなと思ったんですよね。

石川:自分の場合ですけど、緊張しないといいパフォーマンスは出せないと思っていて。緊張は悪いことだと思っちゃうんですけど、そうじゃなくて。いいプレイができた、最高に研ぎ澄まされた時間って、必ず緊張していたんですね。五感が研ぎ澄まされるというか。

水野:そうなんですね。

石川:まぁ、胃は痛いんですけど(笑)「勝負ができる準備が整ったな」って自己暗示していたと思っていますね。

今、はまっているのはゴルフ

水野:競技生活で、すごく準備をして、対策を練って、作戦を考えて、その上で緊張して本番に臨んで、結果が出る経験をされてきた。だから、新しいお仕事でも、質問を準備して、ちゃんと緊張して訊くということができるんですね。

石川:無意識にそのルーティーンを使っているってことですね。

水野:その軸を持っていることは、強いなと思います。でも逆に、あれだけ緊張に慣れ過ぎていると、リラックスするのが大変だったんじゃないですか?

石川:はい、そのことにやめてから気づきました。当時は、リラックスしているつもりだったけど、気が抜けてなかった。今ほどは休めてなかったなって。

水野:今、お休みの日って何をするんですか? 

石川:まず寝ます。休みの日は12時間睡眠。で、頑張れる日はダイエットのために、ランニングをしたり。あとは、ゴルフに行ったり。

水野:何がいちばん楽しいですか? 

石川:ハマっているのはゴルフですね。基本、友だちと行くんですけど、家族もやっていますし、楽しいです。

水野:あれ、ゴルフって何が楽しいんですか? いろんなひとを敵に回しそうだけれど…(笑)。

石川:私も正直、最初は「何が楽しいんだろう?」って思っていました。でも、当たるようになってからおもしろくなってきて。あと、自然の緑のなか、小鳥のさえずりを聞きながら、ボールを打つことで、すごくリラックスできます。

水野:だんだん競技癖が出てきて、凝ってしまうことはないですか?

石川:意外とないですね。練習は嫌いでうまくならないので(笑)。水野さんは趣味とかありますか?

水野:マジでないんですよ。

石川:お忙しいから。趣味って結構、時間かかるじゃないですか。

水野:半分は仕事が趣味なところもあるから。いや、それよくないですよね。何か趣味あるかな。ゴルフ…行かないなぁ。

石川:行かなそう…(笑)。

水野:朝早く行くんでしょう? 道具を揃えて。しかもゴルフって、ひとと行かなきゃいけないじゃないですか。

石川:コミュニケーションが大変です。疲れますよね。

水野:でも石川さんも人見知りなほうだって伺ったんですけど。

石川:人見知りです。だからゴルフも、超仲いい特定の何人としか行かないです。結構1日長いですし。18ホールあるので。

水野:しかもゴルフ終わったあと、ご飯を食べたり、アフターコミュニケーションもあるじゃないですか。いやぁ…ツラいなぁ。誰かと時間を拘束されるって本当に得意じゃなくて。正直、気まぐれなんですよ。「今ちょっと走りたいな」とか、「今ちょっと本屋に行きたいな」とか、思ったときに動ける状態じゃないとツラくて。

石川:気分がその日になってみないとわからないタイプってことですね。

水野:だから、僕と一緒にいると非常にめんどくさいと思う。

石川:…ひとりで楽しめる趣味が見つかったらいいですね。

水野:半分笑っているじゃないですか(笑)。石川さん、ひとりでやる趣味はないですか?

石川:私、めちゃめちゃテレビっ子で。テレビ大好きなのでなんでも観ます。ドラマ、映画、バラエティ。子どもの頃は、頭に番組表を入れているのが趣味だった。テレビが趣味。

水野:じゃあそれが結構リフレッシュになったんですか?

石川:はい。楽で、動かなくていいし、疲れないし。最高の気分転換、テレビ。

好きでいられる距離感

水野:いいですね。ちょっと僕も趣味を探します。石川さんはこれから、体を動かすことも趣味できる状態になったんですよね。下手したら卓球も趣味になるぐらいの。

石川:卓球は…ちょっと…。

水野:スイッチが入っちゃう?

石川:いや、なかなか練習場に足が行かないです。卓球は好きなんですよ。でも、練習はもういいかな。子どもたちに教室でお手本を見せるためだけに頑張れています。

水野:わかります、わかります。語弊がある言い方になっちゃうんですけど、もう僕もそんなに音楽を聴きたくないですもん(笑)この感覚が伝わるかなぁ。

石川:いや、すごく伝わります。好きだけど、好きだからっていう。

水野:そうですね、距離感が大事ですね。

石川:好きでいられる距離感。

水野:これでまとまったのかな(笑)。でも、自分をいいテンションに持っていける状態でいることは大事ですよね。今日はありがとうございました!

石川:ありがとうございました!

文・編集: 井出美緒、水野良樹
撮影:西田香織
メイク:内藤歩
監修:HIROBA
撮影場所:SALON Coteau (サロン コトー)
https://daikanyama.chacott-jp.com/salon/about/

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