対談Q  石川佳純 (元卓球選手)第3回

今はもう、プレイしたいというより、観て応援したい。 

めちゃくちゃ地味なんですよ!

石川:卓球をやっていると、普段は本当に地味なことしかないというか。毎日5~10人の同じメンバーとしか顔を合わせず、きつくて地味な練習を朝から晩までひたすらやるんですね。だけど、ニュースに出るときって、オリンピックでも世界大会でも勝っているようなときばかりで。

水野:そういう瞬間が、扱われやすいですもんね。

石川:そうなんです。だから、派手というか、華やかなことをやっているようなイメージを持っていただけているかもしれないけれど。全然、もうめちゃくちゃ地味なんですよ!

水野:すごく声に力が入りましたね(笑)。

石川:水野さん、大きいところでライブをされたりするじゃないですか。普段とのギャップっていかがですか?

水野:ギャップは大きいと思います。僕もめちゃくちゃ地味なので。

石川:いやいや(笑)。

水野:「いやいや」ってみなさん言うんですけど、想像されている5倍ぐらいは確実に地味なんです。普段、喫茶店をまわっているだけなので。1日7軒ぐらいまわるんですよ。

石川:7軒…。おともはコーヒーですか?

水野:コーヒーが多いですね。でもだんだんカフェインが強くなってくるので、たまにレモネードにしてみたり。近所の3~4軒の喫茶店をぐるぐるぐるぐる。だから1日に2回、同じ店に行ったりする。

石川:でも気づかれますよね。

水野:気づかれないんですよ。

石川:いやいやいや。

水野:逆に石川さんは?

石川:まったく。 

水野:じゃあ、僕はその100倍ぐらい気づかれないから(笑)。短パン、Tシャツでずっとふらっ~としていますね。

石川:そこで創作活動を?

水野:創作活動というと聞こえがいいですけど、事務作業とか、ちまちましたことも。で、ちょっと気分が向いたら、家にある作業場で仕事をして。本当になんて堕落した生活を送っているんだろうと…。石川さんは競技生活を終えられて、今の生活はどうですか?

石川:すごく楽しい。

水野:そうですよね。

石川:明るさの源はこれなのかなって(笑)。でも、楽しいです。毎日。

前の自分とは180°違う

水野:何が変わりました? 食事とか、体調を気遣ってのスケジューリングだとか、気にしなくていい部分が増えて、どんなことをしたいと思われたのでしょうか。

石川:今までできなかったことですね。私は他のスポーツも好きなんですけど、怪我が怖くてできなかったんです。でも今はゴルフをやったり。キックボクシングやったり。スキューバダイビングとかも。

水野:めちゃくちゃ楽しそう。

石川:常に次の試合があると、「次の試合に向けて、今日何をするべきか」みたいなことを考えて生きてきたんですけど、今はそれがないので。今日のことだけ考えて生きています。それが楽しいですね。

水野:いきものがかりは「放牧」と名付けて、少し活動休止をした期間があるんですね。ボーカルの吉岡は、声が大事なので、アスリートに近いような体調管理を強いられる生活だったんです。とくにライブ前なんかは、睡眠時間の確保とかも、細かく考えて。だけどそこから解放されたら、「とりあえずスイスに行きたい!」って言って、牛に会いに行きました。

石川:へぇー!

水野:まさに“放牧”されている牛の横で撮った写真が送られてきて(笑)。それを今、石川さんのお話をお伺いしながら思い出しましたね。解放されると、まったく感覚が変わりますよね。

石川:オリンピックとか観ても、昔は「絶対に自分が出たい!やりたい!」って思っていたのが、今は「もう自分はイヤだ」って(笑)。イヤだというか、無理だなと。

水野:いったんステージから降りているから。

石川:あんなに緊張することに、もう心臓が耐えられない。そう思うこと自体が、前の自分とは180°違うんだろうなって。プレイしたいというより観て応援したい。そこがいちばん変わりましたね。

水野:すごい変化ですね。現役時代はそんな客観的に観られないですもんね。次の試合のことを考えて、「こういう場面が自分に来たらどう乗り越えるか」とか、お仕事目線になってしまう。

石川:それが今はもう単純に「頑張れ!」って感じで。すべて応援して過ごした今年でしたね。

インタビューされるより、するほうが緊張する

水野:僕、やっぱりもう、誰かのライブを観ていて楽しめないですよ。

石川:そうなんですか。それはまったく音楽のジャンルが違ったとしても?

水野:はい。もちろん感動しますし、すごいなと思います。だけど、「あー今、照明が切れるの早かったな」とか、「今、ミュージシャンのなかでどういうことが起きているのかな」とか、変な視点になりますね。よくないです。

石川:ちなみに水野さんご自身は、ライブの演奏中にどんなことを考えられているんですか?

水野:えー…。いろんな観点があって。曲のことを考えている瞬間もありますし。演奏中は他のミュージシャンとのやり取りがあるので、「あ、普段とは違うフレーズを誰かが始めたな」みたいなことに反応していく瞬間もあります。あと、吉岡の声の調子を考えて、「今日はいい状態だな」とか。もしくは、「今日はあんまりコンディションよくなさそうだな。次のMCは喉を休ませるために、自分がわーっと喋っちゃおう」とか。

石川:はい、はい。

水野:そして、お客さんの反応を見ながら、「今日のお客さんはこういうテンションか。じゃあ次の展開は、こういう空気を作っていかないと」とか考えていたり。…なんかこれもあまりよくないですね(笑)。

石川:いやいやいや。演奏だけに集中ではなく、いろんなことをやらなきゃいけないんですね。

水野:変な質問だけど、石川さんは競技中に何を考えているんですか? 

石川:基本的には作戦ですね。自分がしたいこと、相手がしたいことを考える。でも私はすごくせっかちでイライラしちゃうんですよ。だからそれを「抑えなきゃ…」とか。そういうことを考えています。

水野:今、取材をする側になって、カメラの前で喋るときはどのようなテンションでいらっしゃるんですか? 緊張が大きいのでしょうか。

石川:インタビューしてもらうのはあまり緊張しないんですけど、するときはすっごい緊張します。やっぱり答えやすい質問と答えにくい質問ってあるじゃないですか。

水野:僕もいつも反省しています。

石川:相手がなるべく答えやすい質問をしたいなと思うと、緊張しますね。

水野:いいですね。すごいな。真面目だな。

文・編集: 井出美緒、水野良樹
撮影:西田香織
メイク:内藤歩
監修:HIROBA
撮影場所:SALON Coteau (サロン コトー)
https://daikanyama.chacott-jp.com/salon/about/

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