まわりが見えているひとは、ツッコミ気質
出すぎちゃっているひと
橋本:普段、水野さんと吉岡さんは、ツッコミとボケでいうとどちらですか?
水野:お互いに二面性はあるものの、確実に僕はツッコミだと思います。
橋本:じゃあ吉岡さんの天然な感じにツッコまれるんですね。
水野:吉岡の場合、ライブは本当に準備するひとなんです。本番までのスケジュールを分刻みで決める。ライブ前のどのタイミングで声出しをして、ストレッチをするか。ライブの段取りも、セットリストのなかでどういうMCをするかも、すべて頭のなかに叩き込むタイプ。
橋本:アスリートですね。
水野:でも、たとえばラジオで芸人さんにお会いしたりして、突拍子もないことをポンと投げられたとき、スポーンッ!って返すのは彼女なんですよ。僕、何も返せない。
橋本:吉岡さんにはアドリブ性があるんですね。ライブのMCはちゃんと用意するのに。
水野:逆に僕は、ライブはあまり用意しないんですよ。MCで何を喋るかも決めてなくて。
橋本:そのときのお客さんの空気感だったり、熱量だったりで決める。
水野:だけど、突発的に何か言われて、パッと返すことができないですね。「こう言われたら、こう返そうか」とか、「こうしなきゃ」とか考えすぎてしまって。
橋本:水野さんはちゃんとされているから。あと、たまにツッコミたくなる「出すぎちゃっているひと」っていますよね。この前、食らったんです。初めて行く焼き鳥家さんに「ここから近いし、お腹空いたし、行ってみようか」って電話をしまして。「今から3人で行けますか?」って訊いたら、「あー! 明日やったらパンパンなんですよ! もうほんまめちゃくちゃいっぱい! でも今日やったらイケます!」と。これ、要ります?
水野:(笑)。
橋本:つまり「あなたたちラッキーですよ。当日電話して、予約を取れるような店じゃないんですけれどもね」と言いたいわけです。いや、俺は今から行けるかどうかしか聞いてないと。じゃあ、ちょっとプライドが高いお店なのかなと想像して行ってみたら、実際にやっぱりちょっとプライド高かったですし。そういうのが端々に「出すぎちゃっているひと」っている。
水野:なるほど、なるほど。
橋本:あと、納得してない感が出ちゃっているひと。「全…然…大丈夫です」とか。もう出ちゃっているじゃないですか。大丈夫じゃないじゃないですか。でも本人はそんなつもりない。だからそこで、「いや大丈夫ちゃうやん!」とかツッコめば、「もう1回、会議せなあかんな」ってなる。そこで笑いが起きればいいなと。
気づきすぎて、気づきたくない
水野:今、お話を伺っていて、それに気づけるひとと気づけないひとがいるなと思います。気づけるひとはツッコミ体質なのかな。
橋本:あ、そうですね。
水野:吉岡は多分、それ気づけないです。
橋本:吉岡さんの近くにいたら、まぁツッコめそうですね。
水野:橋本さんがフォローしてくださったら、すごくおもしろくしていただける気がする。彼女は目の前のことにパッっと集中しちゃうから。他のことが見えなくなる愛らしさとおもしろさってあるじゃないですか。
橋本:ボケタイプですね、完全に。
水野:僕はおもしろくすることはできないけれど、橋本さんもおっしゃっていた、「この場で今、このひとこういう思っているな」とか、「このひと今、ちょっとこっちを気にしているな」とか、めちゃくちゃ気づくタイプ。
橋本:もう、気づきすぎて、気づきたくないなと思うときありますよね。
水野:今日も8人ぐらいで打ち合わせをしていたんです。とはいえ、偉いひととか、メンバーの僕とかの話が中心になっちゃうじゃないですか。で、チームに入りたての若いスタッフもいたんですけど、「あ、この子、絶対に今、どこで入ろうか考えている…」って。
橋本:めっちゃわかりますわ。「助けてあげよう。こいつも入るところを…」って考える。
水野:だから、「どのデザイナーさんに頼みましょうか」みたいな話題が出てきたとき、「若いひとはどうやって頼むんですか?」みたいな。
橋本:参加のきっかけをね。それはもうまわりが見えているので、ツッコミ気質ですよ。ただ、優しさと言いますけど、邪悪なときもあります。僕なんか小学生、中学生ぐらいの頃、朝起きたら眠くて機嫌悪くて、テレビで観るものすべてにツッコんでいましたもん。「なんで朝からそんな笑顔やねん」とか。「こんにちはじゃなくて、いってらっしゃいじゃないんか」とか。「なんで明日曇りやねん」とか。「てんびん座なんて知らん」とか。
水野:それで自分のストレス的なものが解消されるところもあったのでしょうか。
橋本:あったかもしれないですね。すべて吐き出すことで。でも、思っている邪悪なことって消せないじゃないですか。だから難しいです。自分、悪いねんなぁって。
水野:自分のなかの罪に気づいちゃうって優しいじゃないですか。
実は怒っているのかもしれない
橋本:あと、これも気づきすぎるゆえのあるあるなんですけど。たとえば、夕方16時半入りだとして、僕は16時10分ぐらいに早めに入るんですよ。すると、16時15分ぐらいに打ち合わせしてくるひとがイヤ。入っていると思わないでほしいです。16時半までは、楽屋とスタジオの収録セットと、俺の心と体を馴染ます時間。
水野:試合開始は16時半からだろうと。
橋本:そう、俺がいるから、「じゃあ早めに打ち合わせしとこう」は、やめてくださいと思います。細かいですよね。でも思いません?
水野:僕も早く着いちゃうことが多いんですよ。たとえば、16時半入りで、それが初めて行く場所だったら、いったん場所を確認してから、時間を潰してきちゃったりするタイプ。
橋本:めっちゃわかります。
水野:「ここだな」と確認して、近くのカフェで待っていて。それなら直前に来ればいいのに、やっぱりなんか気になってしまって、10分前には入っちゃう。すると、「水野は10分前に来るやつなんだ」ってスタッフさんが思うんですよ。そして気を遣い、今度はスタッフさんが15分前に来るようになってしまう。
橋本:そうなんですよ。どんどんこれが…。
水野:16時半入りなんだから、16時半に来てくれていいんですよ。僕はただ、早めに着いておきたいだけの話。…めんどくさい(笑)。
橋本:あとたまにあれありますよね。場所を確認して、近くのカフェで時間を潰して、「オッケー、10分前」と思って行ったら、その建物じゃなかった。あのときの焦りえぐい。「嘘やん! いや、俺30分前にはおった人間と思ってくれ!」って。
水野:そう、だからギリギリに着くのは怖いんですよ。建物はわかっているが、入り口が見つからないとかもね。あと、この建物の5階ってわかっているのに、「このエレベーターは5階には行きません」みたいな。カードとかないと入れない。結果、優しいひとに思えて、めんどうなひとだったりして(笑)。
橋本:吉本なんて前、韓国のどこかの都市に集合とかありましたから。ひとりで。「いや、六本木のテンションで言われても無理やで! 飛行機とかもどれを取ればいいかわからんて!」って。だから、実は怒っているのかもしれないですね。でもそれだと空気が悪くなるから、ツッコミでマイルドにしているのかもしれない。
水野:結果、笑いに持っていくというか。
橋本:ブラックコーヒーに、砂糖とミルクを入れて、ちょっと飲みやすくするみたいな。それがツッコミ。ブラックのままだとキツイという方もいらっしゃるから。もうツッコミ病だと思いますね。
文・編集:井出美緒、水野良樹
撮影:谷本将典
メイク:内藤歩
監修:HIROBA
撮影場所:文喫
https://bunkitsu.jp
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