対談Q 山口明日海(バリスタ)木戸田直子(マスターロースター・焙煎士)× 水野良樹

味や話の内容は覚えていなくても、感情として残っていてほしい。

『HIROBA』とスターバックス リザーブ® ロースタリー 東京がコラボレーションした特別プログラム「FIVESTORIES×ONE SOUND-Brewed in Coffee Moments- by STARBUCKS RESERVE®︎ ROASTERY TOKYO+HIROBA」を、2⽉14⽇(⼟)に開催。今回は2025年第19代コーヒーアンバサダーでバリスタの山口明日海さん(写真中央)と、マスターロースター(焙煎士)の木戸田直子さん(写真右)とのスペシャル対談をお送りします。

雇用形態に関係なく目指すものが一緒

水野:僕もコーヒーが好きで、自分の生活リズムのなかに、コーヒーを飲む時間が非常に大切なものとしてあります。だからこそ、焙煎をして一杯のコーヒーにつながるまでのストーリーが、すべてこのひとつの建物のなかにあることが素晴らしいなと。今回は、ここで働いていらっしゃるバリスタ・山口さんとマスターロースター(焙煎士)・木戸田さんにいろんなお話をお伺いできたらと思います。まず、おふたりはどのようにコーヒーの世界に進まれたのでしょうか。

山口:もともとは母がスターバックスのコーヒー好きだったんです。だから私も、中学・高校時代のコーヒーが飲めない頃からよく連れて行ってもらっていて。そのときのパートナーさん(スターバックス従業員の呼び名)がとても優しくて、「将来はこういうひとになりたいな」と憧れたんですよね。それがきっかけでスターバックスに入社しました。ただ、入社時にはまだコーヒーが飲めなくて。面接でも、必死に飲んだぐらいでした。

水野:では、コーヒーのおいしさに気づかれた経緯というと?

山口:最初は熊本のスターバックスで3年弱働いて。そして、このロースタリー 東京がオープンすることになり、社内で採用募集があったんです。私はコーヒーを通じてひととつながる瞬間や、コーヒー好きなひとが集まる場所が好きなので、「どうしてもここで働きたい!」と希望してここに入りました。すると、オープンに向けて抽出のトレーニングなどがたくさんありますよね。そこで飲み続けているうちに、自然と慣れて好きになりました。

水野:木戸田さんはどのようなきっかけでスターバックスに入られたのですか?

木戸田:私はわりと大人になってからスターバックスで働きました。そのいちばんのきっかけは、家族に転勤が多かったことですね。「全国どこにでも、自分が安心できる場所があるっていいな」と思ったんです。また、もともと働いていたところが“サザビーリーグ”というスターバックスを経営していた会社だったので、自分の気持ちとも合う。だから、気軽な気持ちで入った気がします。

水野:木戸田さんはもともとバリスタをやられていたそうですが、なぜ焙煎士に?

木戸田:最初はアルバイトとして働いていて、社員や焙煎士になるとは思っていませんでした。でも、バリスタで抽出などをやって、勉強を続けていくなかで、焙煎によって味わいが大きく変化することがわかって。徐々に、「コーヒーをいい状態でバリスタに渡す」という形で責任を持ちたい、生産地に貢献したいという気持ちが強くなっていきました。焙煎士は社員でないとなることができないので、アルバイトからそちらの道に。

水野:普段、利用していても感じるのですが、スターバックスのみなさんは社員・アルバイトなど関係なく、高い意識で働かれていますよね。何を訊いても答えてくださるし、心地よい接客をしてくださる。そういう風土に対して、おふたりの立場から思うことはありますか?

山口:私は自己成長を感じられる環境が好きです。目標となるようなものを与えてくれるから、「もっと頑張ろう」というモチベーションにつながる。一緒に働くパートナーとも、日頃から仕事に対する前向きな話をしていく文化がある。だから、“雇用形態に関係なく目指すものが一緒”という意識があるのだと思います。

木戸田:私は2つ浮かびました。ひとつは、たとえば自分が「こんにちは」と言うことで、逆にエネルギーをいただくことが多いなと。日常で多少イヤなことがあっても、仕事に行くと、仲間やお客さまから元気をもらえるんです。だから単純に「私もお返ししたい」という気持ちになります。

水野:自然とそうなるんですね。

木戸田:もうひとつ、「スターバックスだからできることがある」ということがエネルギーになっているように感じます。私が初めて生産地に行ったとき、まだアルバイトで。名刺も持ってないし、豆1粒さえも買ってあげられませんでした。でも、ひとりの力ではなにもできないけれど、レジでコーヒーを勧めたりすることで、自分にもできることはあるなと気づいたんです。今、約2080店舗あるスターバックスで、「もっとちゃんとコーヒーを伝えたい」とそれぞれが考えることは、もう違和感なく文化になっているのかもしれません。

気づいたら一杯なくなっているようなコーヒー

水野:一杯のコーヒーにたどりつくまでの難しさや関わり方については、焙煎士という立場でどのように考えられていますか?

木戸田:スターバックスは今後、より店舗が増えていくと思います。となると難しいのは、作る量が増えて、原材料の幅も広がってくるなかで、高いクオリティーを保つことじゃないですか。今のチームは7人なのですが、そのチームで常にベストの状態で出荷できるように責任を持つことが、私たちのすべきところだなと思います。飲んだときにホッとして、気づいたら一杯なくなっているようなコーヒーをみんなで目指していますね。

水野:「飲んだときにホッとして、気づいたら一杯なくなっているようなコーヒー」のようなコンセプトは、みなさんでどうやって話し合いながら組み上げていくのですか?

木戸田:まず、「イヤなところがない」という点を揃えることは大事です。あとはとにかく共有していきますね。たとえば、アメリカで開発されたコーヒーで、「こういう特徴があります」とカードに書かれていても、日本だと気候が違って、湿度も温度も違う。環境が違うので100%は再現できないんです。でも、書かれている要点と、私たちにとってのそのコーヒーのよさは大事にする。そして、「こういうよさがあるから、火力はこうしよう」など、チームで考えていきます。

水野:山口さんは、“おいしいコーヒー”とはどのように定義されていますか?

山口:その定義について最近、より考えることが増えたのですが、「時間が経ってもおいしいコーヒー」を大事にしたいなと思っています。たとえば、温度が下がっても飲みたくなったり。ロースタリー 東京に来て、コーヒーを飲んで帰ったあとも、「またあそこのコーヒーを飲みたいな」と思ってもらえたり。味や話の内容は覚えていなかったとしても、感情として残っていてほしい。そういうコーヒーを届けたいですね。

水野:お客さんを目の前にしたとき、何をいちばん見ていますか?

山口:見て知るというより、話して聞いて知ることを大事にしています。ロースタリー 東京は、“とにかく大きい有名なスターバックス”ということで、初めて来店される方が多いんです。つまり、好みや求めているものがお客さまによってかなり異なる。だから、「なぜここを選んでくれたのか」とか、「何を求めて来てくれたのか」とか、会話を通して知った上で、「これがいちばんいいんじゃないか」というものを提案させていただいていますね。

水野:リクエストに応えられないときはありませんか?

山口:いや、ないですね。それは私がすごいわけではなく、ロースタリー 東京がどんな方にも合うようなものを提供しているからだと思います。ブラックコーヒーでもいろんな種類、いろんな淹れ方がありますし。コーヒーを飲めない方に提案できるものもありますし。2階にはお茶、3階にはバーがあります。だからこそ、そのひとに合わせた提案をすることができるんです。

水野:お客さんとの会話によって、ご自身の成長を感じられることなどもあるのでしょうか。

山口:お客さまとの会話では、自分が大事にしている“原点に帰る”ような感覚になることが多いです。たとえば、私は最近、ラテアートの練習をしていまして。初めて来店されたお客さまが、カフェラテを頼んでくださったので、シンプルなラテアートで提供をしたんですよ。そうしたら、「こんなラテアートを見たら、今日一日がいい日になるよ」とすごく喜んでくださって。ラテアートひとつでも、思いを込めて丁寧に提供することで、お客さまの一日がちょっとでもよくなる。そういう職業だなと改めて感じました。そこは絶対に大事にし続けたいですね。

水野:それを日常的に感じられる現場って素晴らしいですね。

木戸田:気づいたら十何年も経っているけれど、それは居心地がいいからだなと思いますね。

“コーヒーワンダーランド”を目指して

水野:スターバックスのみなさんは、店員さんのことを“パートナー”と呼ぶ文化も象徴的です。みなさん、店舗でその日あったことを話したり、コーヒー体験の提供の仕方を一緒に考えたり、意識を共有なさっている。おふたりにとって、“パートナー”とはどういう存在でしょうか。

木戸田:とくに焙煎士は、どうしてもストイックにひとりでいる時間が増えるんです。1回の焙煎で6600杯分できるので、生産者の方をはじめ、関わっているたくさんの方のことを思うと失敗できない。そういう緊張する仕事だからこそ、許しあえる仲間がいることによって、すごくホッとします。新作のときには、かならずグループを組んで、2人以上でやるのですが、その緊張をわけあってくれるひとがいることも大きいですし。

水野:なるほど。

木戸田:家族より長い時間、一緒にいる大事な存在ですね。でも、ちゃんと言わなければいけないことは素直に言えるし、受け止められる。仲間っていいなと思います。

山口:私がいるフロアには、90人前後のパートナーがいます。こんなに他者と関わることって、今まではあまりなかったなと。個性豊かなひとたちと働かせていただいて、いろんな部分を受け入れたり、受け入れてもらったりしていて。そのなかで、自分もまだ気づけてない弱みも知ってもらっていたりするんです。まさに木戸田さんがおっしゃるように、“仲間”のような感覚ですね。

木戸田:もちろんうまくいかないこともあるけれど。

山口:それぞれに、「もっとこうしたい」という目指す場所がありますからね。ただ、通っていく道が違うことはあっても、共有している大きな意識は一緒だなと思います。

水野:おふたりは、お客さまにとってこの場所が、どういう存在であってほしいですか?

木戸田:コーヒーワンダーランド。

山口:たしかに、まさにロースタリー 東京はそうですね。

木戸田:この規模や音、五感でワクワクしてもらいたいです。本当は焙煎も、寡黙にひとりで作業したほうが、クオリティーは担保しやすいんですよ。でも、真剣な姿を見ていただいて、「スターバックスっておもしろいことをやっている」とか、「よくわからないけれど好きになった」とか、思っていただきたい。そして、スターバックスを通して、最終的にはコーヒーを好きになってもらえたらいいなと思っています。

山口:バリスタによって持っている話が違うので、いろんなことを聞けるし、いろんなものを見られる場所だなと思います。この場所で、自分に合ったコーヒーに出会うことが、コーヒーを好きになる入り口になったら嬉しいですね。

文・編集:井出美緒、水野良樹
撮影:北川聖人
メイク:内藤歩(水野良樹)中山しずか(山口明日海、木戸田直子)
監修:HIROBA
撮影場所:スターバックス リザーブ® ロースタリー 東京
     https://www.starbucks.co.jp/reserve/

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