『Samsung SSD CREATOR’S NOTE』栗林和明

「こういう方法論でこういう型を作ればできる」と証明したい。

J-WAVE『Samsung SSD CREATOR'S NOTE』
https://www.j-wave.co.jp/original/creatorsnote/
“いま”を代表するクリエイターをゲストに迎え、普段あまり語られることのないクリエイティブの原点やこれから先のビジョンなど、色々な角度からクリエイティビティに迫る30分。J-WAVE(81.3)毎週土曜日夜21時から放送。

水野:今回のゲストは、クリエイティブディレクターの栗林和明さんです。よろしくお願いします。

栗林和明(くりばやしかずあき)
クリエイティブディレクター。1987年生まれ。広告会社を経て、CHOCOLATE Inc.に参戦。映像企画を中心として、空間演出、商品開発、統合コミュニケーション設計を担う。JAAAクリエイターオブザイヤー最年少メダリスト。カンヌライオンズ、スパイクスアジア、メディア芸術祭、ACCなど、国内外のアワードで、60以上の受賞。米誌Ad Age「40 under 40(世界で活躍する40歳以下の40人)」選出。

すべてを図で考えています

水野:最初にものづくりに興味を持ち始めた時期というと?

栗林:小学3年生です。当時、僕はマジックが大好きで、Mr.マリックさんやセロさんに大きな影響を受けていました。テレビ番組で手品コーナーが始まったら、録画して、かぶりついて観るんです。それをあとで1コマずつ送ってチェックして、タネがわかるとものすごく興奮して。翌日には学校で披露していましたね。「手品という魔法が使いたい」という好奇心で動いていたのだと思います。

水野:その好奇心が今のお仕事にどう繋がっていくのでしょう。

栗林:原体験になっているのは、ビックリするものをみんなに見せたとき、喜んでもらえたり、仲よくなれたりすることが嬉しかったこと。そして、どんなに無理だと思っても、タネと仕掛けによって実現できること。それがきっかけで、「できないことはないのかもしれない。何でも自分で作ることができる」と思ったんです。

水野:いつ頃からクリエイティブな仕事に自分が行くことを想像されていましたか?

栗林:僕、「自分は絶対にこの方向へ行く」というビジョンが感覚的にビビッと見えるときがあって。それが中学2年生のときでした。当時、『世界まる見え!テレビ特捜部』という番組で、世界の広告特集をやっていたんです。そこでたしか、日本人が世界最大の広告祭のグランプリを獲ったというニュースが流れて。それを観たときになぜか、「自分もこのステージに立つ」と思ってしまって。もうそこから広告の道を目指しましたね。

水野:広告のなかでも、“映像”という分野も見えていたのですか?

栗林:そうですね。当時、Xboxの60秒CMで「Life is Short」という名作を観て、「短い時間でこんなに心を動かされるってすごいな。自分もそういうものを作りそうだ」と思いました。とはいえ、大学時代に何かクリエイティブな勉強をしていたわけではなくて。「このままではダメだ」と、コピーライター養成講座に通い出したんです。そこからやっと具体的に広告の世界が見えるようになっていきましたね。

水野:「自分は他のひととここが違う」という感覚は何かありますか?

栗林:今、クリエイターと名乗らせていただいていますが、クリエイターという感覚は1ミリもなくて。クリエイティブな才能はないと思っているんです。でも、手品で教わったように、「分解して紐解けば、何でもできるようになる」という感覚だけはあって。それでここまで来ているように感じます。

水野:世間にインパクトを与えた作品にたくさん携わっていらっしゃいますが、その理由もすべて説明できるというか。

栗林:もちろん。クリエイターの方は、記憶力の偏りが肝になっていると思うんです。たとえば、切ない映画を作る方だったら、日常のなかの切ない感情や瞬間に対する解像度がものすごく高い。僕はそういう感覚は強くないんです。ただ、図解力が高い。物事を分解して、図にしたり、脳内で整理したりすることがすごく得意。言葉で説明するのは苦手で、すべてを図で考えています。それを活かしてクリエイティブをしているんですよね。

水野:図は二次元ですか? 三次元ですか?

栗林:僕の場合、二次元です。ビジュアルシンカーと呼ばれるタイプで、立体的なものはまったく想像できないのですが、図であればイメージできる。いつもキーノートというプレゼンツールを使っていて、それがあると他者とすごくコミュニケーションが取りやすくなります。

水野:栗林さんが携わった作品は、凄まじい拡散をされていますが、その拡散までイメージされていますか?

栗林:ものすごくイメージしますね。どういうコメントや反応があるか、何十通りも想定して書き出して、大体そのとおりになる感覚です。

水野:その正確さは栗林さんの強みですね。

栗林:そうですね。試した量の多さがすべてだと思っています。ありがたいことに広告って、フィードバックを受けることができるじゃないですか。「こうやったら、こう返ってくるんだ」という反復練習をたくさんすることができたので、正確さの精度が上がってきた気がしますね。あと、僕は以前、“YouTube再生数クイズ”というものをやっていて。

水野:え、それは何ですか?

栗林:話題になった映像がSNSで流れてきたとき、再生数を見る前に中身を見て、それが何回再生されているか当てるんです。ファーストカットで何が映って、どれだけ動きがあるか、どれくらいのテンポで進んでいくか、そういうものを変数として脳内で演算していく感覚でした。

属人的なものに対するカウンターを打ちたい

水野:物事を見るフラットな精神性は、どのように培われているのでしょう。

栗林:そもそも“自分の感覚は間違っている”という前提がありますね。実際、違うことのほうが多いですし。でも、これまでの経験則で考えたところは合っている。そういう積み重ねです。

水野:その経験則が通用しない瞬間はありますか?

栗林:たくさんあります。今、映画を作っているのですが、まるっきりルールが違いますから。テンポをよくすればいいものではない。映画ならではの視聴態度や、映画でなければ深められない感動があったりもしますし。そういうときには0から向き合い直す感覚ですね。

水野:違うフィールドになったとき、どこから見ていくんですか?

栗林:見るというより、作るところからやってみます。作っていくと、見たときの吸収力が上がっていくんです。たとえば、「音楽ってここまで使わなくていいんだ」とか、「ここまでのテンポならゆっくりでも耐え得るな」とか、そういうことをインプットしていく感覚ですね。

水野:映画サイドから来たクリエイターの方の反応はいかがですか?

栗林:おもしろがってもらえることが多いです。僕らは作るとき“どう届くか”を前提としながら、深めていくところがあって。そこを映画の方に「どうしてそんなに届けるのがうまいんですか?」というふうに捉えていただけて。あまり否定されることはないんだなと思いましたし、自信を持つことができました。変に映画の作法に則って作らず、自分たちなりのやり方で作ると、自然にオリジナリティは出る。そういう学びにもなりましたね。

水野:広告的になりすぎる恐怖はあったりしますか?

栗林:ものすごくありますね。企画書ではおもしろいけれど、物語にしたときに深みがあるのだろうか、とか。消費されないような太いものをどうやって作ればいいのだろうか、とか。常に広告とは逆に考えないと、すぐに沼にハマってしまうなという感覚です。

水野:栗林さんのなかで整理されていることは、後輩クリエイターや同じチームの方に、説明することはできるものですか? 要は、属人的ではないものにできるのかなと。

栗林:伝えられるようにしていますね。僕、属人的なものに対するカウンターを打ちたいところがあって。自分はクリエイティブな才能がないからこそ、「こういう方法論でこういう型を作ればできる」と証明したいんですよ。そういう可能性を広げるプロセスだったので、自然と図解して説明できるようになったところはあります。チームの場合は、説明したその型に対して、どれだけみんなのアイデアを入れられるかが重要になってきますし。

水野:その方法論や型に限界はあるのでしょうか。

栗林:限界というより、「こういう方向性のものは作れないな」というものはあります。それこそ、ひとりの圧倒的アーティストだったり、属人性の高いものは別種だなと。

水野:属人的なものが、方法論や型にドッキングする可能性はないですかね。

栗林:僕はあると思っています。チームで型に則った作り方をするとき、そこにどういう属人性のある才能を巻き込むかというところが、ある種のレシピになるんじゃないかなと。作家性のような原液を、どうやってブレンドしてオリジナリティを出すか挑戦している。それはイコール、ドッキングしているということかもしれません。

水野:栗林さんは企画を考えるとき、どういうところからスタートされるんですか?

栗林:とにかく自分の好きなものをたくさん並べるところから始めます。たとえば、SNSで「いいね」をしたものとか。文章だけではなく、動画やイラスト、音楽、いろんなものをバーッと並べるんです。すると、「どうして自分がいいと思ったのか」ということが浮かび上がってきて、自分が作りたいものの方向を照らしてくれるんですよね。まずはそれにすがって進んで、困ったときに考えて分解して、ヒントになるものを探す感覚ですね。

“連想着火性”が肝

水野:現在、劇場アニメ『KILLTUBE』を制作中ということで、パイロット版を拝見させていただいたんですけれども、この企画はどのように考えていかれたのでしょうか。

栗林:「世界に旗を立てられるような作品を生み出したい」という思いが根本にありつつ、やはり自分の好きなものを並べてみたんですよ。そのとき、ストリートファッションを身にまとった侍のイラストがあって、「カッコいいな」と。それで、このイラストの人物が成り立つ世界を考えました。もし現代まで江戸時代が続いていて、侍が決闘をYouTubeで動画配信していたらおもしろいんじゃないかなという妄想が生まれて。

水野:それを映像に落とし込むのは、ものすごく大変じゃないですか。

栗林:そこからのプロセスはかなり特殊でしたね。まず「2026年まで江戸時代が続いていた」という設定があり、そのお題をいろんな職種のクリエイターに見せたんですよ。音楽家、コンセプトアーティスト、デザイナー、アニメーターなど。そして、「ここからそれぞれ思い描いたものを作ってください」と伝えました。

水野:おもしろい。どうやってまとめるんですか?

栗林:まとまらないです。絶対にぐちゃぐちゃになる前提です。でも、そのなかからまた自分が好きなものだけを残すというやり方をさせていただきました。たとえば、「この音楽がすごくカッコいいから、この世界観のコンセプトアートを作ってみてほしい」とか、「このアートをもとに、次の物語を考えてみよう」とか、そういう形で。好きなものから、また次のお題を渡し続けていった結果、あのパイロット版ができあがりましたね。

水野:ご自身のYES・NOが積み重なっていくと、それが栗林さんの属人的なものになっていく気がするのですが、どうバランスを取られたのでしょうか。

栗林:むしろその選択だけに僕の属人性を出した感覚です。アイデアの部分は、徹底的にチームの総力戦。ただ、使わないアイデアも出てきてしまうので、そこはクリエイターの方々に、「申し訳ない。でもそういうプロジェクトとして付き合ってほしい」と最初にお願いして進みました。あと同時に、「僕の想像をぶち壊してほしい」というところを伝えてからスタートしたのですが、やはり自分の想像を超えるものになりましたね。

水野:長く残る作品は、どうしたら作ることができると思いますか?

栗林:まさに絶賛試行錯誤中で、偉そうには語れないのですが、普遍的であることは重要だと思います。人間がどの時代でも抱く感情。「こういうものがひとの心を動かすよね」とか、「こういうことにみんな悩むよね」とか、そういうものから生み出さなければならないんだろうなと。でも、そのなかでも、「心の底から僕がワクワクしているものを作ろう」という意識がありますね。

水野:次にやりたいことはもう浮かんでいらっしゃいますか?

栗林: 100年続く作品をどう作れるかと考えています。それは、「百次創作ぐらいまでやりたい」っていうことなんです。僕は“サイバーパンク”が、いちばんいい例だなと思っていて。“サイバーパンク”って、ある小説が生み出した世界観なんですけど、二次創作、三次創作と伝播して大きくなっている。それぐらいみんなの創造性を触発して、広げ続けられて、愛される世界観はどうしたら作ることができるのか。今いちばんの関心事ですね。

水野:どうやってそれを調べていくのでしょう。

栗林:おそらく“連想着火性”を分析することが肝なんじゃないかなと。僕は“それを見たときに次を想像してしまう力”を持っているものを“連想着火性”と呼んでいるんです。たとえば、『ONE PIECE』で“ゴムゴムの実”があって、“バラバラの実”があると、ひとは次にどんな実があるか想像してしまうじゃないですか。そういう“連想着火性”をどれだけ詰め込むことができるかが、長く広げ続けるためのヒントだと思っています。

水野:もしそれができたらどうなるんですかね。

栗林:ひとつの創造のプラットフォームになっていく気がします。みんなそこで妄想して、表現して、評価し合う。そういうことができたらいいですね。実はもっとやりたいことは、それを現実の世界に落とし込むことなんです。みんなが、「こんな街にしたい」とか、「あんなものを作りたい」とか、想像が止まらず、具現化していく街があったら、楽しみだなと。違うものに応用していきたい気持ちがありますね。

水野:では最後に、これからクリエイターを目指すひとたちにメッセージをひと言お願いします。

栗林:ひと言でいうと、「原液を作ること」が大事だなと。好きなものやこだわりたいことを、小さくてもいいから、とにかく超絶密度で作り切る。それを作ったら、いろんなひとが声をかけてくれて、次のものを作ることができたり、ファンができたりするので。まずは、「原液を作ること」からすべてが始まると思っています。

https://open.spotify.com/show/4lrj5PkQvi19qfvUSAbYJJ

Samsung SSD CREATOR’S NOTE 公式インスタグラムはこちらから。

文・編集:井出美緒、水野良樹
写真:北川聖人
メイク:内藤歩
番組:J-WAVE『Samsung SSD CREATOR'S NOTE』
毎週土曜夜21時放送
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