自分に制限をかけなければ、目の前のものはすべてモチーフ。

J-WAVE『Samsung SSD CREATOR'S NOTE』
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“いま”を代表するクリエイターをゲストに迎え、普段あまり語られることのないクリエイティブの原点やこれから先のビジョンなど、色々な角度からクリエイティビティに迫る30分。J-WAVE(81.3)毎週土曜日夜21時から放送。
水野:今回のゲストは、面白法人カヤックのゲームクリエイター・郭子靖さんです。

郭子靖(かくしせい)
面白法人カヤック 企画部のディレクター、ゲームクリエイター。ハイカジチーム所属。1000万ダウンロードを記録した話題のハイパーカジュアルゲーム「Kissing Now」。この異色のヒット作を生み出した。
“ごっこ遊び”はゲームづくり

水野:日本語はネイティブではないそうですが、まったくイントネーションが不自然ではないですよね。
郭:子ども時代から、それこそいきものがかりさんが主題歌を担当されている『NARUTO -ナルト-』とか、本当にいろんなアニメを観たり、曲を聴いたりして、だんだん日本語を話せるようになりました。
水野:ゲームに興味を持たれたのはいつ頃ですか?
郭:小学生の頃、いちばん最初に遊んだのが「ウォークラフト」というゲームでした。RTS(リアルタイムストラテジー)というジャンルの作品です。不純な動機ですけど、そのゲームが“映えた”んですよ。当時、「自分はこんなゲームをやっているんだ」と友だちに見せたい欲求が強かったので。ずっとゲーマーとして遊んでいましたね。

水野:それがどのようにゲームを“作る側”のモードに変わっていったのでしょうか。
郭:もともと“ごっこ遊び”が好きだったんですけど、実は“ごっこ遊び”ってゲームづくりじゃないですか。自分でシナリオや設定を考えて、「じゃあ君はこのキャラクターで」って友だちに役を与えて。つまり、ゲームでいうとDM(ダンジョンマスター)側になるのが、小さい頃から好きだったんです。自分が作るもののなかで、ひとがどう反応するか見ることにおもしろさを感じていたのだと思います。
水野:最初からゲームクリエイターという職業に就きたいと思っていましたか?

郭:そういう計画性はありませんでした。大学もゲーム専攻ではなく数学専攻でしたし。しかも「倍率が低くて入りやすいから」という理由で専攻したんですよね。でも、勉強をしていくなかで、「数学は自分が好きなものではないな」と気づいて。途中でゲーム専攻に変更しました。
水野:ゲームづくりに数学の知識を使えることもありましたか?
郭:正直、そんなにないですね。お恥ずかしい話、僕は逃げ回るばかりの人生で、やりたくないと思ったらすぐにやめる人間なんですよ。数学がおもしろくなくて、ゲームの道に進んで。そして、ゲームの世界にもいろんな職種がありますよね。それで最初はプログラミングをやっていたんですけど、「プログラミングに専念するのはイヤだな」と思って。アイデアを考えるのが好きなので、最終的にこの方向性になっていきました。
水野:自分の人生の選択は早いほうですか?
郭:そうですね。やってみて、「向いてない」と思ったら、すぐに変えます。そこは欠点でもあり、救われている部分でもあって。「これをもっとやりたい」というものが見つかって、そちらに向かってまた努力するんです。
ようやく生み出した「Kissing Now」

水野:では、面白法人カヤックに入社しようと思った動機というと?
郭:まず、情報発信からちゃんとしているなと思いました。5年連続で日本企業のアプリダウンロード数1位だったり、ゲームのダウンロード数が15億に達していたり。さらに、「うんこミュージアム」という企画をやっているのですが、就職前の説明会でみんなが突然、「うんこ!」と叫びながら始まるんです(笑)。本当にぶっ飛んでいる会社で、みんなが楽しんで仕事をしているなと。そのファーストインプレッションが強かったですね。
水野:実際に入ってみていかがでしたか?
郭:いちばん驚いたのは、上下関係がまったくなく、みんながフラットだったことですね。会社のために、何億という売り上げで貢献しているすごいクリエイターの方も、平然と隣に座っている。細かい問題も気軽に訊くことができる。それぞれが作りたいものを、同じ場で作っている状態がすごいなと思っています。
水野:それはいい環境ですね。でも逆に、すべてが競争になるから、怖くなりませんでしたか?

郭:最初は怖いです。ものすごく売れている方が隣に座っているのに、自分は入ったばかりの新卒で、「何もできないままでいいのか」という緊張感があって。でも、とにかく雰囲気がいいんです。みんながザ・クリエイターで、ただ自分がおもしろいと思っているものを作っていて、仕事をしている感じがしない。会社ではなく、サークルみたいな雰囲気というか。自分も成長できる環境だなと感じました。
水野:その雰囲気は、経営者の方が作っているんですか? それともチーム全体で?
郭:両方の努力があると思います。いろいろと管理しにくい部分もあるでしょうから。それぞれ凝った性格を持っているし、作っているものも凝っているし。「こんなものを世に出していいのか?」というものが毎日あるんですよ。飽きませんね。
水野:そのなかで、郭さんは新卒1年目で「Kissing Now」というゲームを作られたんですよね。
郭:僕は作る側というより、アイデアを出して、プログラミングの方と相談して作る立場なんですね。それをいきなりやるのは難しいじゃないですか。「なんで新人の企画を作らなきゃいけないんだ」と思われるかもしれない。しっかり実績を残して、信ぴょう性を得ないと、どんどん立場が厳しくなるなと。そういう緊張感のなか、何作か失敗して、ようやく生み出したのが「Kissing Now」でした。

水野:なぜ、“キス”をテーマに?
郭:僕が作っているゲームは、ハイパーカジュアルというジャンルなんですね。広告を収益モデルにしているから、広告を見たユーザーに、「これおもしろいな、遊んでみたいな」と思ってもらって、ストアでダウンロードしてもらわないといけない。だから、だから、画面的に何か惹きがないと成立しないわけです。そこで、プレイヤーがひと目でわかるもの、遊びたくなるものを必死に考えました。
水野:なるほど。
郭:で、僕にとっては、画面のなかで人体が伸びることがおもしろいんですよ。子どもの頃、『トムとジェリー』で観たような。
水野:たしかにそういうシーンがありますね。

郭:そういう絵を思い浮かべたとき、いちばん簡単なのは“キス”という行為だなと考えました。首が伸びるじゃないですか。それを企画にして出した感じです。
水野:最初にその企画を会社の方々に伝えたときは、どのような反応が返ってきました?
郭:うちは企画書も雑というか。しっかり仕様書を書いて相談するのではなく、「こういうアイデアが浮かんだんですけど、どうですか?」くらいの軽い雰囲気なんです。僕もひどい絵1枚で渡したんですけど、プログラマーさんが「おもしろいんじゃないか」って。で、その方は何億も売り上げを出したクリエイターなんですけど、丁寧に作っていただきました。
水野:「これはできないよ」みたいな風土ではないんですね。
郭:違いますね。とにかくアイデアを出して、そのなかから判断します。とくにハイパーカジュアルというジャンルの特殊なところかもしれません。
水野:自分の作ったものが、どんどん世の中に広がっていくのは、どんな感覚でしたか?
郭:嬉しかったですね。こんなに多くの方に届いて、喜んで遊んでいただいて。これもハイパーカジュアルの魅力なんですけど、小さい規模で作るので純度が高いんです。実はゲームのなかのSEとかレベルづくりも自分ひとりで完成させました。だから、作品そのものが自分であり、自分の作ったすべてが世の中から認められるような感覚でしたね。それは大事な体験で、別のジャンルのゲーム制作では得られなかったものだなと思います。
とにかくたくさん作る

水野:ゲームを考えるとき、何から始めるのですか?
郭:基本はアイデアからです。モチーフを選ぶことから始めます。広告って、みなさん真面目に見ているわけではないじゃないですか。だから、ひと目でキャッチしてもらえるようなモチーフ選びがすごく大事で。
水野:ひとの目を引くモチーフを見つけるって、ものすごく難しくないですか?
郭:難しいけれど、自分に制限をかけなければ、目の前のものはすべてモチーフですから。日常の小さなところで、突然ひらめいたりするんですよね。それを自分が「おもしろそう」と思えれば、すぐに企画として出せる。そういう部分でいうと、便利ですね。
水野:モチーフを見つけたあとは、どのように制作を進めていくのですか?

郭:それはブレストですね。面白法人カヤックという会社は、ブレスト文化の強い会社で。自分ひとりでもいいし、チーム内の隣に座っているひとを呼んでもいいし、「これでどんな遊びができるか」という質問をして、みんなで一緒にブレストしながら考えていくんです。
水野:アイデアとして取り上げるものと取り上げないものの差は何ですか?
郭:もう好みですね。あと、ものづくりのとき、自分がおもしろいと思うものを出したいじゃないですか。でも、同時に商売でもある。すると、どうしても予算とか時間とかいろんな制限が出てきますよね。その枠のなかで、どれだけ自由におもしろいものを作ることができるか。そこのいちばん譲りたくない信念に従って作ればいい、ということはいつも思っています。

水野:これから、どういうゲームを作っていきたいですか?
郭:僕はすごく運がよくて。プランナーという職種は、経験がない状態で、ひとつの作品を完全に自分のものとして作ることはなかなか難しいと思っています。誰かのもとで学んで、知識を得てから、やっと自分の作品にできる場合が多い。でも、ハイパーカジュアルというジャンルでは、最初から自分のものを出せるチャンスがあったんです。それを利用して、作る経験を積んで、自然と大きなプロジェクトに移していきたいですね。
水野:ハイパーカジュアルというジャンル以外のものに踏み出す瞬間もありますか?
郭:自分がいちばん好きなジャンルは、ボードゲームなんです。だから仕事だけではなく、個人的にボドゲづくりもやっていますね。浮かんだアイデアをそのまま形にする感覚で。
水野:ボードゲームって、何十年経っても楽しめるイメージがあって、時代を超えていく作品も多いですよね。
郭:いや、そんな大きな夢は持っていません。逆に水野さんは、「ブルーバード」のような大ヒットソングを作られたとき、もう最初から“長年歌われる歌”としてアイデアが浮かんでいましたか?
水野:まさかこんなことになるとは思いませんでした。下北沢の安アパートの部屋で、小さな声で作った曲が、海外の方にまで聴いてもらえるようになるなんて。10年経って、「小学生のときに聴いていました」と言ってもらえるようになるなんて。ビックリですよね。
郭:それを聞いて安心しました。僕もひとつのゲームを作るとき、「これがおもしろい」とただその瞬間、思っているだけなんです。ただ、とにかくたくさん作ることは、どの業界にも共通している大事なことかもしれませんね。量があれば、経験値も増えるし、必ず運がいいときが来る。突然、プレイヤーたちに響く日が来る。自分のなかで、そういうふうに完結している感じですね。

水野:では最後に、これからクリエイターを目指すひとたちにメッセージをひと言お願いします。
郭:どうやったらいいアイデアが出せるか、必死に考えてきましたが、結論としては「自分が楽しい人生を生きていないと、何もできないな」と思います。自分が楽しめるものや好みがあるからこそ、独創性が生まれて、ようやく自分のものを作ることができる。だから、メッセージとしては、「面白く生きる」ですね。


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文・編集:井出美緒、水野良樹
写真:北川聖人
メイク:内藤歩
番組:J-WAVE『Samsung SSD CREATOR'S NOTE』
毎週土曜夜21時放送
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