対談Q 世武裕子 第4回

誰かの浄化フィルターになること=自分が生きていること。

脳の検査をしてもらったら…

世武:私は水やんみたいに優しい歌詞は書けないなぁ。やっぱり「ツラいことから逃げるなよ」って思いが滲み出ちゃって、単語が独り歩きしやすい言葉が出てきやすいのよね。そんな歌詞は書きたくないから、難しいなと思う。だけどやっぱり言葉が好きで。前にも話したけど、脳の検査をしてもらったら言葉の領域が真っ赤だったから。

水野:すごいねぇ。

世武:先生にも「結構、論破するタイプじゃないですか?」って言われて。理屈っぽい感じです、みたいな。

水野:だから僕らは波長が合うのかもしれない(笑)。

世武:あはは!音楽的な面はどうか訊いたらさ、「まぁ普通のひとよりはあれですけど、天才肌みたいな感じではない」って言われて残念がったよね(笑)。でも、たしかに言われてみると言葉には随分こだわってきているのよ。今でも日記を書きながら、「癖で使っているこの言葉の解釈って何だろう?」と辞書を調べたり。それで「微妙にニュアンスが違うんだよな」とか「これ勘違いして捉えていたわ」とか、そういうのもおもしろいんだよね。

水野:すごく生意気なこと言っていい? 『世武日記』が始まってまだ間もないけど、文章が上手くなってきているよね。

世武:嘘ぉ! やったー!

水野:やっぱりピアノと同じで、もともと持っているものもあるから、ずっと続けたら今後もっと上手くなるんだろうなって。しかもこの“感情の文脈”の自然さが、より“文章の文脈”の自然さに繋がったら…。もう「書き続けたほうがいいよ!」って言いたくなっちゃうんだけど、そうすると音楽を作る時間が…。

世武:あ、それは大丈夫!ひととご飯を食べたり遊んだりする時間を削っているだけだから(笑)。音楽の時間は削られてない。大丈夫。ただ、引きこもりは加速したけど。音楽やって、ウォーキングして、日記を書く。最近なんて誘われても、「すみません。夜は日記を書くので、ランチはいかがですか?」って(笑)。しかも日記、元旦から始めたやん。だけど初っ端から大地震があって。

水野:重かったね。

世武:2日目とかもう書きたくなかったわけよ。だけど日記をやるって言ったとき、スタッフに「世武ちゃんYouTubeだって続いてないじゃん」って言われて。たしかに飽き性だから続かないの。それが自分のいちばんダメなところだと思っているんだけど。

水野:俺も。超飽き性。

世武:本当? 「日記も本当に毎日ずっと書くんだったらいいと思うよ」って、もう半分「やらないだろ」って感じで呆れられて言われたわけよ。で、負けず嫌いだから、「絶対にやってやるし!24時までに上げるし!」みたいな。1月2日くらいからしばらくキツかった。日記ではあるんだけど、自分の決め事はあって。だけど文章が上手くなってきたことはシンプルに嬉しいし、脳の取っ散らかっていることを整理するのにも慣れてきたんだと思う。本当にやってよかった。

ハムスターの回るやつ。

水野:そろそろまとめに入らなきゃいけないんだけど、何をまとめよう(笑)。かなり前になっちゃうけど、世武さんのライブの感想をインスタのDMで送ったりして。

世武:ああ、くれたね。

水野:あのライブは衝撃的でしたね。今日の話にも繋がるのかもしれないけれど、みんなの空気がわーっと世武さんに入っていって、わーっと出ていくみたいな。いやぁ…なんて言ったらいいんだろう。感動しているし、圧倒されるし、第一義的には「すごいピアノだね」とか「すごい歌だね」って言って終わっちゃいそうなんだけど。

世武:うん。

水野:世武さんが訴えているようでそうじゃなくて。一旦、世界を引き込んで訴えているように見えて。

世武:私、よくひとの愚痴を聞くのよ。で、「言ってスッキリしたわ」みたいなのが多いわけ。そういう私を見ている友だちは、「またそんな何時間もひとの話を聞いて。すごく大変じゃない? 時間ムダじゃない? 忙しいでしょう」って言うの。でも私はそれでいいわけ。迷惑でもない。自分の仕事が「ここまで聞いたら本当に作業できないから限界だ」とかもわかっているし。

水野:はい。

世武:極論、自分が作曲スピードを上げたら、そのひとの悩みをあと1時間は聞けるわけだから。じゃあ自分がはやく書けばいいだけじゃんって思う。それは自分自身が必要としていることでもあるかもなって。誰かの浄化フィルターになること=自分が生きていることというか。だから作曲も、自分が考えて書いてはいるんだけど…。

水野:固定化してないよね。止まらない。曲作っているときも、話しているときも、ずーっと動いている。現象が起きている。

世武:ハムスターの回るやつみたいな(笑)。

水野:回り続けているのよ。何なんだろう。

世武:でも自分が早口なのは本当に嫌なんだよなぁ。

水野:いやいや、早口じゃないと多分、狂うよ。自分が思ったことをバーッと喋ってないと。

世武:そう、それよ!早く言わないと考えていることに間に合わない。

水野:たまにインスタでピアノ練習みたいなの上げているでしょう。動画で。あの光景を観ていると、本当に考えて弾いているのかわからないんだよ。もちろん考えているんだろうけど、うわ~って水が流れるように弾いている。音が流れていく。その感じで曲も作っているんだろうなぁって。川の流れがぶわーってあって、それが自分のなかを通っていくところを、水の流れをうまくまとめるみたいに「こっちに流れがきたら、こうやって、こうきて…」って作っているんじゃないかなって。

世武:近いかも。今、聞いて思ったけど、映画『マトリックス』で最初、緑色のコードが流れていくじゃん。あの感じでばーって出てくるのを瞬時に掴む。出てくるのを見逃さないように!みたいな。あ、あと回転寿司でお寿司取るときみたいな。

水野:(笑)。

世武:迷っていたら次の席に…ってなるじゃん。

水野:太字で書かれちゃうよ。段落のいちばん上に「世武裕子にとって作曲は回転寿司」って(笑)

世武:こんな喋ったのに(笑)!? でもそういう感じなんだよな。

水野:どういう感じわからないけど、それでいいんだと思う。

世武:無理だもん。安めぐみさんみたいになれないもん。

水野:よくわからないよ(笑)。

世武:一度ラジオでご一緒したんだけど、私まで言葉がゆっくりになるんじゃないかって思うぐらい。穏やかで、みんなが癒されてさ、すごく包まれたわけよ。だからああいう女性が理想なんだけど、現実は…。

水野:無理、無理。

世武:ハムスターの回し車。

最近、編曲が楽しい

水野:いやぁ…ちょっとまた一緒に曲を作ってくださいよ。

世武:私、気づいたの。水やんのおかげかもしれない。最近、編曲が楽しい。

水野:マジで!

世武:正直、最初に水やんに話をもらったとき、「えー、編曲って。私、作曲家だから」って思っていたの(笑)。

水野:ごめんなさい! やっぱりそうだったか!

世武:言い方が悪いけど、テレビに出ていてみんなに希望を与えているようなひとが、共感力にそもそもフォーカスしないひとに編曲なんかを任せることによって楽曲クオリティーが落ちないか、とか。求められているものとズレていかないか、とか。そういうことに怯えていたわけ。「幸せのままで、死んでくれ」のときも、最初「私にはできないかも」って言ったじゃん? 「バンドサウンド、無理じゃない?」って。

水野:毎回言うじゃん(笑)。俺、1回でOKしてもらったことほぼないから。

世武:あれ、そうだっけか。でも1度は断りそうになったけど、やってみた結果、すごく楽しかったし、バンドメンバーのおかげもあっておもしろいものができた。だから、最初から「できない。私じゃないかも」って思うのをやめようと思ってね。

水野:「誰か」もよかったね。本当によかった。ありがとうございました。

世武:うん。

水野:いやー、また何か。

世武:何かしらやりましょう。希望になる40代として。スターとかじゃなく、頑張って生きているという意味の希望。

水野:一日のライブのためだけのバンドとか。

世武:マジでやろう。

文・編集: 井出美緒、水野良樹
撮影:LILNSY
ヘアメイク:枝村香織
監修:HIROBA
撮影場所:広島アンデルセン

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