重要なのは“「そもそも」「たとえば」「つまり」”3つの接続詞。

J-WAVE『Samsung SSD CREATOR'S NOTE』
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“いま”を代表するクリエイターをゲストに迎え、普段あまり語られることのないクリエイティブの原点やこれから先のビジョンなど、色々な角度からクリエイティビティに迫る30分。J-WAVE(81.3)毎週土曜日夜21時から放送。
水野:今回のゲストは、コピーライターの阿部広太郎さんです。

阿部広太郎
電通入社後、人事局に配属。クリエイティブ試験を突破し、入社2年目からコピーライターとしての活動を開始。現在、CXクリエイティブ・センター所属。自らの仕事を「言葉の企画」と定義。クリエイティブディレクターとして、広告クリエイティブの力を拡張しながら領域を超えて巻き込み、つながり、助け合う対話型クリエイティブを実践する。
著書に「待っていても、はじまらない。ー潔く前に進め」(弘文堂)、「コピーライターじゃなくても知っておきたい 心をつかむ超言葉術」(ダイヤモンド社)、「それ、勝手な決めつけかもよ? だれかの正解にしばられない『解釈』の練習」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、「あの日、選ばれなかった君へ 新しい自分に生まれ変わるための7枚のメモ」(ダイヤモンド社)。
転機は“嫉妬”でした

水野:阿部さんは、HIROBAをいちばん最初の頃に広げてくださった方でもあります。対談をしていただいたり、一緒に打ち合わせをしてひとつの企画にしたり、イベントにご登壇いただいたり。そういう親交もあり、今回またお呼びさせていただきました。阿部さんが、広告というものに興味を持たれたのはいつ頃なのでしょうか。
阿部:大学生の頃です。広告会社のインターンシップで、“打ち合わせをして、企画を考えて、プレゼンをする”という広告業界の仕事を知って、「こんな世界があるのか!おもしろそうだな」と興味を持ちました。それまではクリエイティブとはむしろ無縁な男だったんです。アメリカンフットボールを15歳からやっていましたから、体力勝負が自分の売りだと思い込んでいましたし。アイデアを考えることやものづくりは自分からは距離があるものだと思っていました。
水野:ただ、広告会社に入られて。最初はクリエイティブ部門とはまったく違う部署に配属されたんですよね。
阿部:最初のキャリアは人事局からスタートしました。あとで配属理由を教えてもらったのですが、「見た感じちゃんとしてそうだから」、「いいひとそうな印象だから」だったそうで。さらに、同期の飲み会で幹事をやっていたことなども見てくれていたみたいで。「ああ、そこを見てくれていたんだな」と自分で自分を納得させた感じでしたね。社会人になったばかりだったので、「とにかく頑張って働くぞ」という気持ちではいましたし。
水野:阿部さんって、見るからにいいひとで、しかも本当にいいひとなんですよね。だから人事と伺ったとき「たしかにな」と思いました。
阿部:まわりからも、その“たしかに”と言ってもらえました(笑)。そもそも自分は10代の頃、誰ともなかなか繋がることができず、ひとりぼっちで学校から帰るような孤独感を抱えていた時期があって。誰かと繋がっているとか、繋がる場を作るとか、そういうことを根源から求めているんですよね。だから、人事という役割に自分を納得させたところもありました。

水野:そこからどのようにクリエイティブ部門へ?
阿部:転機は“嫉妬”でした。今度は自分が社会人側として、インターンシップの学生を受け入れて、そのサポート役をやることになったんです。そこで学生の子たちが、目を輝かせながらプレゼンテーションしている姿を見て、自分はそれを後ろからビデオカメラで撮影していて。彼らのプレゼンが終わるたびに拍手をするんですけど、自分の心はまったく浮き立っていませんでした。むしろ手を叩くことで本音が叩き起こされる感じがして。
水野:はい、はい。
阿部:「俺、本当はアイデアや言葉で、場が盛り上がる瞬間や、気持ちがひとつになる瞬間を作りたい、そんな広告の仕事がしたかったんだ」とそこで気づきました。それが社会人1年目の夏。そこから2年目になる手前に「クリエイティブ試験」があるんですけど、そこに向けて、勉強を始めたんですよね。
水野:広告の勉強とはどのようにやっていくものなのでしょうか。
阿部:おそらく音楽の勉強と似ています。名曲を知って、それを自分なりに因数分解して、いいところを考えていくのと同じです。本屋さんで、コピー年鑑という分厚い本を購入して、自分がいいと思ったコピーを書き写していきます。何がいいコピーで、どういう作りなのか考えていく。あとは、先輩にアタックして、「ぜひ課題を出してください」とお願いしました。そして、添削していただいて、マンツーマンでフィードバックをもらうということをやっていましたね。
水野:いいコピーと、そうではないコピーの基準とは何でしょうか。

阿部:のちに私も自覚できたのですが、“心が動かされるかどうか”ですね。たとえば、自分はAと認識していたものが、実はBだったと気づかされるような“矢印”がなかに入っている。「ああ、こういう見方ができるのか」と提示してくれるものが、いいコピーなのだと、たくさんの広告に触れるなかで気づいていきました。
水野:それは先輩が教えてくださるものですか?
阿部:具体的に定義を伝えてくれるわけではないのですが、自分が書いたコピーひとつひとつに、「ここは、あなたのなかではわかっているかもしれないけれど、読んだひとがどう思うかというところが足りてないよね」とか、「これは当たり前のことしか言ってないよね」とか、厳しい意見も含め、いろんなフィードバックをいただいて。そのなかで、自分がどうすればいいのか次第に気づいていく感じでしたね。
水野:練度によって能力は上がっていくのでしょうか。素人目からすると、「すごく才能があるひとがやるものだ」と思ってしまいがちですが。
阿部:少しずつ上達していく実感はあると思います。たとえば、対人コミュニケーションでも、相手に何を言うと喜び、何を言うと不快にさせてしまうのか、会話を重ねるとだんだんわかってきますよね。同じようにコピーも、「これを伝えることによって感覚的に響くんだ」という解像度が上がっていくというか。私の場合、諦めの悪さもあって、コツコツと少しずつ見えてきた感覚があります。
泥水をすすりながらやっていて気づいたのは…

水野:広告のお題に対しては、どのように向き合われていますか?
阿部:泥水をすするという表現がありますが、コツコツ泥臭くやりながら私が気づいたのは、重要なのは“「そもそも」「たとえば」「つまり」”3つの接続詞だということです。まず、お題をいただいたとき、「そもそも」という接続詞を意識して定義をしていきます。たとえば、その商品がお菓子であれば、「そもそもこのお菓子はどうして生まれたのか?」とか、「そもそも誰がどう喜ぶものなのか?」というところをきちんと考えて、問い直していく。不明点があればクライアントさんに聞く。
水野:いったん「そもそも」で本質までたどり着こうとするんですね。では「たとえば」とは?
阿部:そのお菓子に対して、「たとえば、自分は10代の頃にこういう接点があったな」とか、「たとえば、他の世代の方ならこう受け止めるかな」とか、「たとえば、YouTubeではこういう紹介をされていたな」とか、自分の脳内の領域を「たとえば」という接続詞で広げていくんです。自分でリサーチしたり、ひとに訊いたりしていきます。
水野:そして、「つまり」ですね。
阿部:「つまり、その商品の魅力や未来の兆しはどこにあるのか」と最後に絞り込んでいきます。「つまり」を決めるときにも、ひとつテクニックがあるんです。“枕詞を疑うこと”が重要だなと。「お菓子といえば○○」という枕詞を思い浮かべて、それをいい意味で動かしていく。裏切っていく。変えていく。すると、みんなが目を向けてなかったところに光が当たり、新鮮に感じてもらえるんです。そういう視点で「つまり」を考えています。

水野:この論理を作り上げるって、とんでもないことだと思います。
阿部:10年以上はかかっていますね。七転び八起きしながら、「こうするとわかりやすいな」とか、「自分はこう教えてほしかったな」というところに、たどり着いていった感じです。
水野:それって他の方にも再現性はありますか?
阿部:あります、あります。「そもそも」「たとえば」「つまり」は、企画書や書類にも使える流れなんです。それを学んだ方々がコンペで結果を残してくれたり、羽ばたいていってくれたりすると、共有してよかったなと思いますね。さらに、何の仕事であったとしても、突破口を探しているときに3つの接続詞から考えてみることは、いろんなひとにとって活きるのではないかなと。それが誰かの役に立てているという実感が、私は嬉しいですね。
水野:また、阿部さんはたくさんの本も執筆されています。何かを言葉にするときのヒントを、わかりやすく伝えてくださっているものばかりで。その言語化する技術は、どのように培われたのですか?
阿部:私自身、何度も立ち止まりながら言葉について考えていて。だからこそ、どうやったら凝り固まっている自分の思いを、言葉にほぐしていけるのかいろいろと考えて。先ほどの3つの接続詞だったり、「ヒストリーのなかにストーリーがある」ということだったり、先輩方からたくさんの方法を教えてもらったことで、「こうやってアプローチをすればいいのか」ということが少しずつ自分のなかに積み重なっていき、そしてそれを書籍にまとめているという感じなんです。
ひとりぼっちで家に帰る自分が原点にある

水野:その本を読まれる方がいたり、阿部さんが主宰されているイベント「企画でメシを食っていく」に参加される方がいたり、次のクリエーションに繋がっていくことをご自身はどう受け止めていますか?
阿部:ものすごくモチベーションになっています。やはり、ひとりぼっちで家に帰る自分が原点にあるんですよ。心にぽっかり空いた穴を、残りの人生でずっと埋めているような感覚があって。だから、自分がやったことや書いたこと、いわば「この指とまれ」に応えてくれるひとがいること、それが喜びなんです。
水野:そのなかでたくさんの新しい才能にも出会っていかれますよね。阿部さんご自身に変化はありますか?
阿部:自分がいつまでもフレッシュな気持ちでいられますね。物事を素直に受け止められる。熱量を持っている方と新たに出会い続けることで、自分自身も初心をずっと忘れないでいられます。長く続けると、どうしてもある種、“できてしまう”部分もあるじゃないですか。最初の気持ちを持ち続けるためには、エネルギーも必要。そういうなかで、ずっと初心を思い出し続けることができているのが、自分にとっていちばん大きいです。
水野:阿部さんはやはりずっと“ひらいている”のが素敵ですね。最初にHIROBAのことを相談したときも、「HIROBAを広げる、楽しいを広げるということがいいんじゃないですか?」というヒントを阿部さんがくださって。それは今でも胸に置いている言葉なんです。

阿部:ひとりの自分が、ひととして生きていくなかで、たくさんのひとの交流が生まれるきっかけになることができたらいいなと思うんです。だから、ひらいているひとでありたいんですよね。
水野:これからの自分のお仕事の仕方や生き方で、意識されることはありますか?
阿部:広告業界が自分を成長させてくれたな、という気持ちが強くて。だから、この業界に貢献していくことはもちろん、そこで培ってきた言葉の力、企画やアイデアを考える力が、たくさんのひとに役立つことをこれからも証明し続けていきたいです。教育や学び、違うジャンルでも活きるという実例が、ひとつでも増えていくような活動を、前向きに笑顔でやっていきたいと思います。
水野:では最後に、これからクリエイターを目指すひとたちにメッセージをひと言お願いします。

阿部:「待っていてもはじまらない」ということを伝えたいです。今、自分がいる場所でもどかしさを感じている方。「もっとできるのにな」と思っている方。私もかつて同じ気持ちを感じていました。でも、動いたときに、時計が進んだ感覚があったんです。自分から一歩を踏み出してみる。はみ出してみる。何か自分にとっての物語をスタートする。そういうことが人生を好転させていくきっかけになるのではないかと思います。
水野:まさにそこでアクションを起こしていったのが阿部さんですからね。
阿部:年齢をひとつの理由や言い訳にしてしまいがちですが、自分がやってみたいと思うことがあるなら、まったく遅くなくて。「それでもまだ遅くない」というメッセージもセットで伝えたいですね。


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コピーライターで作詞家の阿部広太郎さんをお迎えしたJ-WAVE「TOKYO NIGHT PARK」の対談。
Part 1 たどり着くまで
https://note.com/hiroba_official/n/nb8ffa38ce705?sub_rt=share_sb
Part 2 人が変わっていく瞬間
https://note.com/hiroba_official/n/n58d617a9f12b?magazine_key=mb9bdee0f094a
Part 3 未来の自分との勝負
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Part 4 新たな視点
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文・編集:井出美緒、水野良樹
写真:北川聖人
メイク:内藤歩
番組:J-WAVE『Samsung SSD CREATOR'S NOTE』
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