『Samsung SSD CREATOR’S NOTE』沙羅ジューストー

日本の“かわいい”という思想やデザインが、世界をリードしていく。

J-WAVE『Samsung SSD CREATOR'S NOTE』
https://www.j-wave.co.jp/original/creatorsnote/
“いま”を代表するクリエイターをゲストに迎え、普段あまり語られることのないクリエイティブの原点やこれから先のビジョンなど、色々な角度からクリエイティビティに迫る30分。J-WAVE(81.3)毎週土曜日夜21時から放送。

水野:今回のゲストは、バーチャルヒューマンプロデューサーの沙羅ジューストーさんです。

沙羅ジューストー
1995年生まれ、福岡県出身。 8歳から18歳までをカナダと米国ハワイ州で過ごす。 大学進学時に日本へ帰国し、2018年武蔵野美術大学造形学部造形学科油絵専攻卒業。 ギャラリーでキュレーターなどを務めたのち、2020年にバーチャルヒューマンを手がけるAwwに入社。

バーチャルヒューマンの美空ひばりさんを見て…

水野:改めて“バーチャルヒューマン”とは何でしょうか。

沙羅:バーチャルって、AIとかCGとかいろいろありますが、“コンピューターのなかで作られている人間”と説明するのがいちばん簡単ですね。たとえば、映画のキャラクターもそうですし、ゲームだったら『ファイナルファンタジー』とか。それが、インフルエンサーのような現実世界のものにも浸透しているのが、“バーチャルヒューマン”の定義に近いと思います。

水野:その人物を作って、喋ることやパフォーマンスなどの行動をすべてプロデュースしていくんですね。

沙羅:そうですね。実際の人間やキャラクターをプロデュースすることと似ています。どんな性格で、どんな発言をするか。映画の登場人物にも、キャラクターデザインをする方がいて、台本があるじゃないですか。同じように、脚本を書いて、その“バーチャルヒューマン”を自由自在に動かしている感覚です。

水野:そのお仕事にたどり着くまでの軌跡でいうと、沙羅さんは子どもの頃、海外で過ごされていたそうですね。

沙羅:もともとは日本で生まれて、日本語しか喋ることができなかったのですが、8歳~18歳というティーンエイジの年月をカナダとハワイで過ごしたんです。日本語学校にも通わず、最初からすべて英語だったので、本当に怖くて。小学3年生までは、普通に日本の学校に行っていたのに、急に数学も歴史も、英語なんですよ。

水野:何もわからないし、何も喋れないと。

沙羅:昼休みに子どもたちが、「HELLO」って声をかけてくれたんですけど、もう「HELLO」さえもわからなくて、トイレに逃げて引きこもっていました。それでも海外で10年間は過ごしたので、高校の頃にはもう、ずっと英語で育った子よりもテストの点数が上になっていましたね。読書とか大好きだったので。

水野:ものづくりをスタートされたのはいつ頃から?

沙羅:最初の記憶というと、アンパンマンの絵を描いていたことぐらいですけど、中学生の頃にはもう、「アーティストになる」と叫んでいました。高校生になってもずーっと絵ばかりを描いていて。途中でパソコンを使って描くことも覚えたので、海外のpixivみたいなところに、アニメの絵を描いて投稿したり。アニメフェスでブースを持って、ポスターを売ったり。そうやってがっつりオタクをやっていた時代があります。

水野:そこから、どのようにバーチャルヒューマンというものに興味を持たれたのでしょうか。

沙羅:最初はデジタルとかバーチャルとかまったく興味がありませんでした。美大でも油絵学科でしたし。でも、テクノロジーによって、世界が日々いろいろ変わっているじゃないですか。表現がアップデートされているなか、「なぜ私は油絵を描いているんだろう」と思ったんです。好奇心が強いからこそ、型にハマりたくないなと。そうやって悩んでいるとき、ちょうど森美術館でテクノロジーによるアートの展示会があって。

水野:それはそんなに昔のことではないですよね。

沙羅:コロナ禍の少し前ですかね。そこでバーチャルヒューマンの美空ひばりさんが歌う展示があって、ものすごく感動しました。「ああ、テクノロジーってこんなに人間の心を動かせるんだ」と初めて実感して。しかも、海外育ちなので、当時は美空ひばりさんという存在も知らなかったのに。

水野:美空ひばりさんの文脈を知らずに感動したのが、またおもしろいですね。

沙羅:さらにその数か月後、バーチャルヒューマンのインフルエンサー・imma(イマ)ちゃんを見つけたんです。バーチャルヒューマンの美空ひばりさんを作ったのと同じチームで、毛穴ひとつまでリアルに作られていて、人間と見間違うぐらいのクオリティーでした。SNSも、本当に普通の人生を生きているような投稿ばかり。それを見て、「これが次世代のアートだな。命を作ることに進化していくんだな」と思って、Awwに入社しました。

リアルとデジタルの狭間にいる存在、immaちゃん

水野:Awwに入社されて、最初はどのようにバーチャルヒューマンに関わっていったのですか?

沙羅:最初は、他のイベントで通訳しているところをスカウトされたんです。Awwはバーチャルヒューマン会社で、2018年ぐらいからバーチャルヒューマンを作っているんですけど、突発的にimmaちゃんのインスタが人気になってしまって。当時は2~3人しか会社にいない状態で。「最近、海外のプロジェクトがすごく増えていて、通訳してくれるひとを探しているんだけれど、できる?」って声をかけられました。

水野:なるほど。

沙羅:それで、「誰の通訳なんだろう」と思って会議に行ってみたら、リンキン・パークのマイク・シノダさんで。「なんだこの会社は!おもしろそう!」と思ったんです。それで、通訳からではなく、プロデューサーという形でしっかり入らせてもらうことにしました。最初は、代表の守屋貴行をメインにimmaちゃんがプロデュースされていたんですけど、「グローバルな目線も入れていきたい」という話になり、私も関わり始めて。

水野:はい、はい。

沙羅:私は海外育ちだから、わりと社会問題に興味があって、そういうことを話すんですよね。でも、日本のインフルエンサーで話しているひとは少ない。だから、「沙羅は何をやりたい?」と訊かれたとき、「immaちゃんで社会問題をやりませんか?」と提案しました。海外からの「immaちゃんに来てもらえませんか?」という問い合わせにも対応したり。自分の興味があるところから、immaちゃんの活動を広げることから始めましたね。

水野:ここ数年で、バーチャルヒューマンに関わるテクノロジーは、すさまじいスピードで発達しているじゃないですか。そういうなかでどういう差別化を図っていったのでしょう。

沙羅:immaちゃんは、現実世界にシームレスに入れると思っているんです。もちろん初音ミクちゃん大好きですし、VTuberもおもしろい。でも、彼らは二次元のカルチャーから生まれた存在なんですよね。immaちゃんは、作られている素材は一緒だけどリアルすぎて。たとえば、COACHのグローバルキャンペーンにimmaちゃんが出て、役者やラッパーの方々と共演したんですけど、初見ではバーチャルヒューマンだとわからないぐらい。

水野:へえー。

沙羅:ということは、様々なブランドの広告に、そこまで抵抗なく出られる。そこがすごいなと。リアルとデジタルの狭間にいる存在がimmaちゃんであり、バーチャルヒューマンだと思いますね。

水野:ただ、実際の人間ではないからこそ、配慮しながら作られているところも多いですよね。バーチャルヒューマンだからこそ言及できる一方で、非常にセンシティブになる場面もあるのかなと。

沙羅:実際に炎上しているアメリカのバーチャルヒューマンもいるので、かなり気をつけていますね。広告も慎重に選んで、断ることも多いですし。ただ、運用設計次第でリスクマネジメントがしやすいので、企業にとって安心材料になりやすいところはあると思います。

水野:生命としての老いもないですもんね。これから、バーチャルヒューマンはどうなっていくのでしょう。

沙羅:クオリティーがアップしていくほど、表現が広がっていくんじゃないですかね。キャラクターと喋ることができる体験も増えていくと思います。最近、AIを活用してimmaちゃんと話せるようにしているんですよ。数年前までは難しかったので、台本もチームが裏で作っていたんですけど。それはimmaちゃんだけではなく、人間のクローンにも言えます。たとえば、バーチャル水野さんと話せるブースができたりするかもしれません。

水野:AIが自律的に動いてしまっても、ブランディングのコントロールはできるのですか?

沙羅:企業さんからもいちばん多い質問です(笑)。たとえば、競合のブランドの話はしてほしくないとか。政治的な意見はしてほしくないとか。そのコントロールは毎回、微調整しています。LLMという脳みそ部分に、immaちゃんの性格を作ったんですけど。その上に「こういうことは話す or 話さない」を設定するんです。

水野:ある程度の制限を都度、そこにインストールするんですね。

沙羅:ただ、制限しすぎてしまうと、逆におもしろくなくなってしまうので難しいですけどね。ChatGPTもつまらない回答をするときがあるじゃないですか。それよりも、個性的な性格があって、「えー? そんなこと聞くのー?」みたいな感じのほうが、会話って弾んだりするので。そういうことも常にクリエイティブ的に考えながら作っています。

縄文時代のハニワだってかわいい

水野:もう、“他者”って何でしょうね。たとえば、小さい子がぬいぐるみと本当の友だちのように接することってあるじゃないですか。それって、彼らにとってはまったくバーチャルではなくて、そのコミュニケーションが気持ちを支えていて。

沙羅:子どものときのそれって、人間の心理を突いていると思いますね。大人になるほど、「対人間と話すほうがいい」と思いがちなんですけど、そうではない気がしていて。人間って本来、アニミズムチックなところがあって、とくに日本人はその傾向が強い。たとえば、石も山も神様だし。Pepper(ペッパー)くんとか、LOVOT(らぼっと)とか、私も大好きですし。初音ミクちゃんとかVTuberとか、世界の20年ぐらい先を行っている。

水野:そうですよね。

沙羅:フィクションであるもの、人間じゃないものと話すことって、すごく人間的な行為である気がしています。悪いことどころか、もっと受け入れていったほうがいいんじゃないかなって。「immaちゃんがリアルではない」というところもすごく論点にされるんです。とくに海外では、リアルじゃない子がリアルなことをすると、「そんなものはフェイクニュースだ!」みたいな。

水野:なぜ海外ではそこまでリアルにこだわるんですかね。

沙羅:リアリズムのカルチャーだからだと思います。人間と人間ではないもの。白と黒。人間でないものは敵。『ターミネーター』みたいな。テクノロジーが道具なんですよね。一方で、日本の場合は、『ドラえもん』みたいな捉え方なんですよ。ロボットだけれど、友だちだし、一緒にどら焼きも食べる。immaちゃんに対しても、「別に人間ではないけれど、かわいくない?」と思える。だから、心に響けばリアルなんじゃないですかね。

水野:たしかに。

沙羅:遡れば、もう縄文時代のハニワだってかわいいんですよ。ハニワ展に行くと、みんなが「かわいい!」って写真を撮っているので、海外の方からすると、「なんだこの国は…」みたいな感じだと思います(笑)。そういうリアリズムとアニミズムがある気がして。

水野:今後、たとえば、コミュニケーションを必要としている個人が、「バーチャル友だちがひとりほしい」とか、もう少しローカルサイズになるのかなとも思います。沙羅さんは、どういう展開を考えていますか?

沙羅:100年後や200年後にバーチャルヒューマンの歴史本ができるなら、“インフルエンサー”って多分、第1章の3ページぐらいだと思っていて。つまり、まったく“インフルエンサー”で留まるものではない。AIで対話型バーチャルヒューマンみたいなものをすでに作っていて、導入できそうなところと話していますし。受付とかも、日本は人材が少なくなっていますから、バーチャルヒューマンが普通になっていくんじゃないですかね。

水野:バーチャルヒューマンが普通になっていったとき、どんな変化が起こりますかね。

沙羅:日本にはそんなに変化がない気がします。海外のロボットって、ほとんどがまったくかわいくないんですよ。でも日本では、次々とかわいいものが出てくる。だから、どんどんバーチャルヒューマンが日常に出てきて、人間対人間の時代ではなくなっていくんじゃないですかね。

水野:これから“かわいい”はどうプロデュースしていくんですか? 

沙羅:アメリカにも“かわいい”はあると思うんですけど、日本の“かわいい”は思想や生活文化として根付いていて、そこが強みだと思います。アメリカのトップ企業が作れないんですから。だからこそ、日本と東京って、今スタートアップにとってものすごくホットスポットで。もちろん単純に観光という面でもそうですし、デザインや感性の面で、日本ならではのソリューションがあると思います。日本しか“かわいい”を作ることができないとされているんです。

水野:でも、それを日本人は気づいてないんじゃないですか?

沙羅:気づいていません。多分、日本は“かわいい”のリーダーになります。それが人間にとって重要なパートになっていくので。“かわいい”って、ひとの感情を和らげる効果があるじゃないですか。だから、人間対人間ではないものという関係になったとき、“かわいい”以外のソリューションはないんですよね。私だって毎日、朝起きてターミネーターが横にいたら怖いもん。

水野:それよりはドラえもんのほうがいいだろうと。

沙羅:日本の“かわいい”という思想やデザインが、世界をリードしていくのだと思います。というか、リードしていきたいですね。

水野:では最後に、これからクリエイターを目指すひとたちにメッセージをひと言お願いします。

沙羅:「真実を探せ」ですかね。多分、クリエイターの方々は、日常的に選ばなければならないことがたくさんあると思うんです。進路とかも含めて。そういうなかで、いろんなひとから、「こうしたほうがいいよ」などと言われるかもしれません。それでも自分を貫いて、自分を曲げずに、「何が本当だろうか」と真実を探し続けてください。

Samsung SSD CREATOR’S NOTE 公式インスタグラムはこちらから。

文・編集:井出美緒、水野良樹
写真:北川聖人
メイク:内藤歩
番組:J-WAVE『Samsung SSD CREATOR'S NOTE』
毎週土曜夜21時放送
https://www.j-wave.co.jp/

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