『Samsung SSD CREATOR’S NOTE』マルルーンさん【後編】

~「これはマルルーンだ!」って言ってもらえるように作っています~

型を知ったから、型破りできた

水野:今、学校ではどういうことを学ばれているんですか?

マルルーン:映像学科に所属しているので、映像のことは全般的に。アニメーションや実写映像、CG、いろいろ広く学んでいますね。あとはそれぞれ自分がやりたいことを突き詰めていくというカリキュラムで。

水野:映像のことは本当にわからないんですけど、最初の導入というと、たとえばカメラの知識とかですか?

マルルーン:そうです。カメラのシャッタースピードとか、ISO感度とか。編集ソフトだったら、最初の設定の仕方とか。

水野:あと、画角とかの取り方とか?

マルルーン:はい。構図だと、たとえば会話をしている絵があったら、そこにはカメラが超えてはいけない「イマジナリーライン」というものがあって。それを超えてしまうと、絵が繋がらなくなってしまう。そういう基礎的なところを学びますね。

水野:基礎を今の自分の作品に照らし合わせて、そこをあえて崩すような場合もあると思いますが、マルルーンさんはいかがですか?

マルルーン:意図的に崩していますね。それは大学で基礎を知ることができたからこそというか。型を知ることができたからこそ、型破りできたところはあると思います。

水野:先ほどスタッフの方が、「マルルーンさんの最新作の『ボードゲーム』の映像がありますよ」って見せてくれて。まさに先ほどの“会話の構図”なんですけど、みんなが見たことないような構図なんです。でもそれが、作品を作っていただいた僕らからすると、「これはマルルーンだ!」って思っちゃったんですけど。

マルルーン:でもたしかに「これはマルルーンだ!」って言ってもらえるように作っています。自分の作風も少しずつわかってきたので、覚えてもらえるように。

水野:自分で気づき始めた自分の作風って好きになれます? それとも壊したいと思います? 

マルルーン:作っているときは好きなんですけど、作り終わったあと、なんか嫌いになっちゃいますね。

水野:それ何ですかね。

マルルーン:何ですかね。でも、あの『ボードゲーム』は嫌いにならなくて。

水野:えー!

マルルーン:だからあれが今のところ僕のなかではかなりアツくて。あんな怪作を水野さんに見てもらえるとは思いませんでした。

1から作るものに憧れがある

水野:また、マルルーンさんは映画にも挑戦したいと。

マルルーン:はい。

水野:映画っていうのは、長尺のストーリーがあるものを想定されているんですか?

マルルーン:それもあります。あとMVって基本、音楽があって、それを元に映像をつけるじゃないですか。でも映画は1からすべて作る。音楽も登場人物も設定もすべて。そういう1から作るものに憧れがあって、それがたまたま映画であるという感じですね。

水野:この『ボードゲーム』も、4分弱ぐらいですけど、やっぱり脈絡がないようである。僕らにはわからないようなストーリーが、マルルーンさんのなかにはある。それが心地よさに繋がっているのかなと、不思議な気持ちにもなりました。

マルルーン:こういう作風だと、どうしても“ただチープなだけ”と捉えられがちでもあるんですけど。水野さんのような見方をしてくださる方がいるなら、ありがたいです。もう満足です。

水野:脈絡のないもの、よく理解できないもの、ぐちゃぐちゃなものって世の中にたくさん転がっているじゃないですか。でも、マルルーンさんの作品は、そういう他のものと圧倒的に違う。映像に詳しくない僕らもそう思うのはなぜなのか、それがわからないんですよ。すごく不思議です。

マルルーン:自分は昔から結構、大衆的なものに触れてきたので、難しい小説とかは読めなくて。世の中にウケるものがある程度はわかっている。あと、自分がちょっとひねくれているのが合わさって、こういう作品になったのはあるのかな。…って今思いましたけど、ちょっとわからない(笑)。

水野:結果、わからない(笑)。けれど紐解いていくのはおもしろいですね。マルルーンさんは今、大学4年生ということで、これから卒業を控えられていますが、卒業という区切りはご自身にとって大きいですか?

マルルーン:めちゃくちゃ大きいです。大学院に行くかはまだわからないですけど、社会人に近づくわけで。正直ちょっと怖い。今はまだ学生だからいろいろ許されている部分がたくさんあるなと思います。

水野:意外と怖がりですか。

マルルーン:怖がりです。もう不安なことしかないです。

水野:いいなぁ。ちょっと一瞬、かわいらしいと思ってしまった自分に歳を感じました(笑)。その怖がりも、作品にとってプラスになっているんでしょうね。今後、挑戦したいことなどはありますか?

マルルーン:具体的には決まってないですけど、おもしろいことには積極的に挑戦し続けたいですね。その“おもしろいこと”がどういう形になっても、自分がおもしろいと思うことはやりたい。

水野:おもしろいって、何ですかね。

マルルーン:自分がそのときに“おもしろい”と感じる、感覚的なところなのでわからないですね。でも、トレンドとかもあるじゃないですか。それに逆行したことをやるのも好きなので、そういうのが僕にとっての“おもしろい”かもしれないな、とは思います。やっぱりひととは違うことをやりたいので。

多分、映像がなかったら僕には何もない

水野:いちばん快感なのは、作品ができたときですか? 

マルルーン:そうですね。できあがって、立ち上がって背伸びする瞬間、みたいな。

水野:いいですね。いろんなパターンの方がいるじゃないですか。評価を受けて嬉しい方。作ることだけが楽しくて、結果はどうでもいい方。マルルーンさんは完成、達成の瞬間がいちばんなんですね。

マルルーン:はい。僕の場合、編集にすごく時間かけるので、机に向かっている時間が長いほど、できた瞬間の達成感が大きいなと思いますね。

水野:活動し続けるために、自分にとって何が必要だと思いますか?

マルルーン:やっぱり作り続けること。あとは、自分が好きなものを知って、それをどれだけ突き詰められるか、だと思いますね。

水野:迷いがないですね。好きなものを見つけられるかどうかって、なかなか難しくないですか?

マルルーン:僕は難しくなかったですね。でもたしかに、身近にも好きなものを見つけられないひとはいるので、実は難しいことなのかなもと思います。

水野:映像という存在を持つことができて、本当によかったですね。

マルルーン:多分、映像がなかったら僕には何もないですね。

水野:言い切れるのがかっこいい。すごく眩しいなって思います。

マルルーン:いや、他のこと本当に何もできなくて。

水野:それはすごいことだと思う。さて、最後にこれからクリエイターを目指すひとたちへメッセージをお願いします。

マルルーン:…でも、僕が言うのもちょっとね。おこがましい。

水野:っていうと思った(笑)。

マルルーン:いや本当に(笑)。

水野:では、やがていい意味でのライバルというか、仲間になるようなひとたちに向けて、ひと言。

マルルーン:まぁ…高め合いたいので、お互いにいいものを作って、映像を作ることをやめないような循環ができればいいなと思います。

水野:いいじゃないですか。すごく大人。今回は2週間にわたって映像作家のマルルーンさんをゲストにお迎えして、たくさんのお話を伺ってまいりました。ありがとうございました。

マルルーン:ありがとうございました。

J-WAVE Podcast  放送後 25時からポッドキャストにて配信。

Samsung SSD CREATOR’S NOTE 公式インスタグラムはこちらから。

文・編集:井出美緒、水野良樹
写真:谷本将典
メイク:内藤歩
番組:J-WAVE『Samsung SSD CREATOR'S NOTE』
毎週金曜夜24時30分放送
https://www.j-wave.co.jp/original/creatorsnote/

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