『Samsung SSD CREATOR’S NOTE』槙田紗子

振付によって、とにかく本人たちが楽しくキラキラしていてほしい。

J-WAVE『Samsung SSD CREATOR'S NOTE』
https://www.j-wave.co.jp/original/creatorsnote/
“いま”を代表するクリエイターをゲストに迎え、普段あまり語られることのないクリエイティブの原点やこれから先のビジョンなど、色々な角度からクリエイティビティに迫る30分。J-WAVE(81.3)毎週土曜日夜21時から放送。

水野:今回のゲストは、振付師の槙田紗子さんです。

槙田紗子(まきたさこ)
1993年11月10日生まれ、神奈川県出身。手がけた作品のTikTok総再生回数150億回、SNSを中心にバズを生み出す振付師。
2009年ガールズロックユニット「ぱすぽ☆」のメンバーとしてデビュー。
現在は「最上級にかわいいの!(超ときめき♡宣伝部)」「わたしの一番かわいいところ(FRUITS ZIPPER)」「好きすぎて滅!(M!LK)」など
多数のアイドル・アーティストの振付を担当し、SNSを中心に多くのバズを生み出している。
最近ではライブの演出も手がけるなど振付のみならずマルチに活動中。

アイドル時代のライブ演出で開かれた扉…

水野:もともとはアイドルとして活動されていた槙田さんですが、いちばん最初に歌やダンスに興味を持たれたのはいつ頃ですか?

槙田:ダンスは3歳から習っていました。祖母が安室奈美恵さんやglobeさんが大好きで、小さいときからMVを見せられていたんです。そこで歌って踊るひとへの憧れが生まれて。中学3年生で芸能事務所に入り、そこでアイドルのオーディションを勧めてもらって、それを受けてアイドルになったという感じでした。

水野:人前に出ることなどには、抵抗はありませんでしたか?

槙田:幼少期から、ダンスの発表会でステージに立って照明を浴びて、親戚に見に来てもらうという経験をしていたので、わりと抵抗はなかったですね。むしろ目立ちたがり屋で、たくさんのひとに知られたいと思っていたので、自分から積極的に進んでいきました。そこから20歳くらいまでは、ずっと「売れたい」という一心でアイドル活動を頑張っていたと思います。

水野:そうやってアイドル活動をされているなかで、「私は出る側だけではなく、違う才能があるかもしれない」ということにはどのように気づかれたのでしょう。

槙田:私が所属していたグループは、徐々にセルフプロデュースカラーが強くなっていったんですね。衣装をデザインするメンバーや、歌詞を書くメンバーがいた。そして私は、ダンス経験者であり、もともとアイドルオタクでいろんなライブを観に行っていたからか、「ライブの演出のこのブロックだけやっていいよ。できるんじゃない?」とチャンスをいただいて。それでライブ演出をしたとき、扉が開かれました。

水野:はい、はい。

槙田:若いときは、ただまっすぐ突き進めるじゃないですか。でも、だんだんと大人になり、壁にぶち当たることも増えていくにつれ、「私はこのままで大丈夫かな。もしかしたら夢を叶えられないかもしれない」という現実的な目線が出てきて。そういうタイミングでいただいた演出のチャンスでした。そこで私の演出でメンバーがライブをしている姿を見て、自分がステージに立つのと同じくらいアドレナリンが出たんですよ。

水野:おおー。なるほど。

槙田:「自分はこういうことも楽しいと思える人間なんだ」ということに気づけた。そこから、承認欲求が別ジャンルに進んでいったのだと思います。

水野:シフトチェンジをすることに迷いはありませんでしたか?

槙田:アイドルを辞めて、2年くらいは引きずりました。「まだ自分には、表舞台の夢を叶えられる可能性もあるんじゃないか」と思って、お芝居の仕事をしながら振付など、両方やっていた時期もあります。でも正直、振付のお仕事のほうが順調でしたし、より自分らしくいられるようになっていって。気持ちが切り替わるきっかけがあったというより、徐々に消化していった気がしますね。

ファンの方々の投稿が重要

水野:振付を考えるようになって、プレイヤーのときの視点から変わったことはあるのでしょうか。

槙田:もともとアイドルオタクで、プレイヤー時代からわりと客観視点は持っていたので、ガラッと変わったことはないと思います。ただ、目的意識は変わりました。「いかに自分をよく見せるか」というところから、「いかに振付でその子を輝かせるか」というところに。他者のことを勉強する時間が増えたんですよね。

水野:振付を作るとき、どういう下調べなどをしますか?

槙田:まず、その子のキャラクター性を見ます。グループだったら、グループ内のポジション相関図も調べたり。何よりも大事なのは、ファンの方々の投稿。どういう理由でこの子を推しているのか、この子のどこが好きなのか、ものすごく調べるんです。そして、ニーズに応える。何を求められているかを知ることが重要なので、ファンの方々のSNSには助けられていますね。

水野:ファンの方からのニーズに、プレイヤー自身が気づいていない場合は、どのように本人とコミュニケーションを取られるのでしょう。

槙田:その子をひたすら褒めます。たとえば、私もファンの方と意見が一致している場合は、自分が思っていることを伝える感覚で、「あなたはこういう表情が素敵だから、こういうふうにしたら絶対に喜ばれると思う」みたいなことを言うんです。すると、やっぱり女の子は褒められると伸びる子が多いので、素直に受け止めてもらえることが多い。ひとりひとりの性格を見ながら、なるべく寄り添って伝える努力をしていますね。

水野:そのコミュニケーション技術や、俯瞰してみる視点は、どのように培われたのですか?

槙田:アイドル時代、毎回ライブのあとにやっていた握手会だと思います。年齢も性別も住んでいる場所も違うひとが、目まぐるしく目の前で変わっていくんですよ。そして15秒ぐらいお話をする。そこで切り返し技術が鍛えられましたね。あと、アイドルはひとを喜ばせるお仕事なので、そのひとがどんな言葉を欲しいか、常に考えていたことも大きいです。

水野:当時、ツラくはありませんでしたか?

槙田:私の場合、人気になりたかったので頑張れました。みんなを喜ばせることができたら、グループでよりよいポジションに行けるとか、そういうモチベーションが自分の支えになっていて。かなりガツガツ系だったと思います。

水野:ご自身がアイドルをやっていたからこそ、他の振付師のみなさんと比べて強みになる部分があるとすると、どういったところですか?

槙田:ステージに立つ側の気持ちを少しでも理解できることですね。振付を考えるときも、「本人がイヤなことは絶対にしない」ということを大事にしていて。たとえば、自分がカッコいいと思ったダンスがあったとしても、本人は「かわいく見せたい」という意識が強かったり、カメラにかわいく映らない角度だったりしたら、その振付はやらない選択をします。振付によって、とにかく本人たちが楽しくキラキラしていてほしいんですよね。

とくにスカートを意識します

水野:最近では、2026年1月22日からNetflixで放送開始のアニメ映画『超かぐや姫!』劇中歌「私は、わたしの事が好き。」の振付も担当されました。リアルな人間とアニメーションという違いがありますが、振付をする上で変わることはありますか?

槙田:体の形は影響してくるところはありますね。たとえば、動物に振付したりもするのですが、そもそも関節がなかったり、手が2cmくらいしかなかったり。あと、人間のキャラクターだと、リアルな人間には不可能な動きができるんですよ。大きな動きだったり、ありえないスピードで回転したり。そういう点で遊ばせていただいたりはしています。

水野:そのあたりはアニメーターの方と相談するのですか? 

槙田:事前に打ち合わせはしますね。でも基本的には、自分の振付動画をお送りして、アニメーターの方々にいじっていただくことが多いです。人間の動きを誇張して、「アニメーションだとこの感じがかわいい」という感じに昇華する技術がすごいんですよ。だから、アニメーションになった自分の振付を見て、「自分が踊っていたのよりずっとかわいい!」と感動します。あと「こういう動きがかわいいんだ」と気づかされることも多いです。

水野:人間の振付をされるときは、体のどういうところを意識されますか?

槙田:私はとくにスカートを意識します。「こういう体の傾け方をすると、スカートはこういう動線で動く」とかも想像するので、それを本人たちにも伝えるんです。「スカートの動きを揃えてほしい」とか。スカートって、自分の胴体よりも幅が広いので、スカートの揺れ方がズレていると、引きで見たときにその子だけ悪目立ちをしてしまうんですよ。もしかしたらそれも、自分が衣装を着て踊っていたから、わかることなのかもしれません。

水野:今、振付されたいろいろな作品がSNSでバズっています。SNSの縦型動画に映ることは、普通のダンスとはまた違う工夫が必要ですよね。

槙田:今、縦型動画でプロモーションをしないチームはいないと思うんですよ。どんなダンスを作っても、TikTok画角に昇華させなければいけないしがらみが、よくもわるくもある。だから、最初からTikTokに落とし込める振りを作ることもありますし、どうしても「ここは大きい動きにしたい」と思ったら、2パターン作ります。ライブバージョンとTikTok用と。

水野:どういう知識によって、TikTokに最適化されたダンスが作られていくのでしょう。

槙田:昔から私はK-POPが好きで。K-POPのグループには、手が印象的な振付が多いんですよ。だから、私のダンスのルーツもそういうところにあって、手の動きをつける振付が自分のテイストでした。それからTikTokというコンテンツが出てきて、そこにたまたま自分のテイストがハマったという感じですね。最近は最初から、「TikTokでプロモーションをしたい」というオーダーが多いので、よりTikTokに寄せています。

水野:自分が作った振付を、小学生や中学生もマネして踊っているような状況は、どう感じていらっしゃいますか?

槙田:素直に「すごーい!」って感じです(笑)。今、TikTokでバズらないとテレビに出られなかったりして、ものすごく若い子たちに影響力のあるコンテンツになっているので、アイドルの子たちもTikTokに賭けているところがあるんですよ。私自身は、「そんなに気にしなくてもいいんじゃないの?」と思いつつも、自分の振付が少しでも貢献できて、その子たちが認知されたり、テレビに出られたりすると、嬉しいというより安心しますね。

水野:バズる振付、というものは最初から頭のなかで設計されているのですか?

槙田:最近は感覚が研ぎ澄まされてきて、もう曲が届いた瞬間に、「あ、これはバズるんじゃないかな」とわかることもあります。かと思えば、サビを押し出そうと思っていたのに、AメロやBメロがバズることもあるので、すべてが予想どおりに行くわけでもなくて。でも私は、いい振付を作ることが仕事なので、「バズるかどうかは結果論だから」と思って、あまり気にしていません。

水野:これからの目標はありますか?

槙田:2つあります。1つ目は、海外でお仕事をすること。2つ目は、振付師やダンサーという職業の認知度をもっと上げること。ずっと自分個人の名前で活動していたんですけど、今は仕事をサポートしてくれているアシスタントのダンスチームがいるので、そういう子たちと一緒に、もっと振付界、ダンス界を盛り上げられる組織や仕組みを作っていきたいなと思っています。

水野:ついにダンス界自体をプロデュースするんですね。

槙田:いや、そんな大それたことは言えないんですけどね(笑)。わりと一匹狼というか、あまりひとの手を借りずにやってきたタイプなんですよ。そんな自分が年齢とともに丸くなって、「チームでいろんなことをやりたい」という思考になってきました。

水野:チームのよさって何だと思いますか?

槙田:自分にはできないことを補い合えること。みんなどこかが尖っていて、どこかが欠けている。誰かとまったく同じ形にはならないじゃないですか。だからこそ、強みと弱みが異なるひとたちが集まったら、最強になれるんじゃないかなと。そういうことに、ようやく気づけたんです。

水野:では最後に、これからクリエイターを目指すひとたちにメッセージをひと言お願いします。

槙田:とにかく行動を起こすこと。自分が動くことがすべてですね。失敗してもいいので、自分の信念を曲げず、まっすぐに突き進んでいったら、きっといいことが待っていると思います。

Samsung SSD CREATOR’S NOTE 公式インスタグラムはこちらから。

文・編集:井出美緒、水野良樹
写真:Shimpei Nakagawa
メイク:内藤歩
番組:J-WAVE『Samsung SSD CREATOR'S NOTE』
毎週土曜夜21時放送
https://www.j-wave.co.jp/

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