対談Q ダウ90000(後編)

ダウ90000ってバンドじゃん。

吉原がみんなの輪に入った瞬間。

蓮見:最近、他の芸人さんを見ていて思ったんですけど、俺らは事務所の同期の関係性に近いのかなって。ネタに関しては僕だけだし、ずっと一緒に同期ライブをやっている感覚というか。だからあんまり揉めることもない。

吉原:あー、たしかに。逆に私たちはお笑いの事務所じゃないから、同期もいないし。

蓮見:もし普通に吉本とかに8人で入っていたら、また違っていたと思う。

水野:吉原さんは1人だけ大学が違うじゃないですか。それでもスッと入れたものですか?

吉原:最初はやっぱり年下なのもあってずっと敬語だったし、「おじゃましています」というゲストのような気持ちがありました。どれぐらいまであったかなぁ。2020年9月に始まってから、2021年1月…?

蓮見:うん、1回目の演劇公演。俺はもう明確に「ここだな」って思うのがあるよ。吉原がみんなの輪に入っていった瞬間。

中島:あ! 私もわかった!

道上:あ! あれじゃない!?

水野:すげー! おじさんキュンとしちゃった! 「あそこじゃない!?」って何それ!

吉原:2020年9月に結成して、3~4か月後か。1回目の演劇公演があって。それが終わったあとに…。

蓮見:みんなでアフタートークみたいなのをやっていたんですよ。当時、俺と園田がYouTubeでラジオをやっていたので、メンバーひとりずつ呼んで、「どうだった?」とか聞いていって。そのとき吉原が来て、俺と園田と吉原の3人になって。まだ馴染み切ってなかったから、「何か思っていることがあったら言ったらいいよ!」って流れになったとき、吉原が…ね?

吉原:「園田さん稽古中、レディースみたいな服、着てませんでした?」って。

園田:オーバーサイズね!

水野:いきなりインコース投げてきたんだ(笑)。

蓮見:そのときまだ誰も園田のことをいじれなかったんですよ。なんとなく園田にいじらせない空気があった。俺は言えるけど、他のメンバーは後輩だからっていうのもあったし。でも最年少の吉原が、全員ずーっと思っていた園田のダサいところを的確にバンッ!って突いたから、演劇公演よりウケた(笑)。

中島:それそれ!ってね。

蓮見:そこから園田もいじられるようになったし、吉原もみんなの輪に入ってくるようになったかな。

水野:園田さんもそのいじりを受け入れたんですね。

園田:すごくウケたんですよ。あぁ、もう、こんなにウケたら無理だ! と思って(笑)。

水野:自分の体験談で言うと、いじるので失敗したこともたくさんあって。

蓮見:俺も、忽那の話をラジオでしたら、忽那が泣いちゃったりとか。

水野:ストレートに受け取っちゃいますよね。

忽那:受け取らないようにしようって頑張って、できなかったから泣いちゃった…。

蓮見:頑張ったけど無理だったんだ。…じゃあ俺が悪い。

水野:忽那さんの役柄を見ていても、まさにストレートなんですよね。セミナーを受けて本気になっちゃうひととか。何の違和感もなくて。意地悪なんですけど、他の女子メンバーの誰かがあの役をやったらどうなるだろう? みたいなことも考えちゃって。それぞれの人間性を普段の会話のなかでも形作っているからなんだろうなぁって。

園田:ずっと怒っているコントのときも、怒るのがうまいひと、へたくそなひとがいたり。

蓮見:上原はへたで…(笑)。

水野:だから本当にバンドみたいだなって思う。

蓮見:へぇ!

吉原:バンド。

水野:…カッコつけているなぁ。

一同:いやいやいや!

水野:いや、なんかね、僕らは幼馴染でやっているから、みんなへたくそなんですね。それでもバンドって、「このひとがこの感じで弾くからこそ」ってパズルがすごく合うと、やっぱりそのバンドならではの空気感になるんですよ。

一同:あぁー。

水野:ダウ90000のコントを観たとき、やっぱりみなさんのキャラクターに合っているし、ちゃんとお芝居もされるじゃないですか。しかも「このひとじゃないと」が成り立っている。同じ本でいくら芝居がうまいひとがやってもこうはならない。そう思うと、「ダウ90000ってバンドじゃん」って。…これ太字にしといてください(笑)。

徐々に楽しくなっていく兆しがある。

蓮見:今、よりそれぞれの輪郭が濃くなってきているタイミングなのかもしれないですね。セリフを書いて渡して、テンポのウケぐらいしかないと思っていたところに、読み方で1個足されたとき、「あ、なんかうまくなったな」って思う。その回数がどんどん増えていっている段階なので、みんな変わっていっているなって。

水野:前は違ったんですか?

蓮見:やっぱり度胸つくとめちゃくちゃ変わりますね。前はみんなびくびく舞台に立っていたから。女子は結構、最初から覚悟を決めて、舞台に出たらオンみたいな感じだったんですけど。男3人はぬるっとしているときがあった。でもなくなりましたね。強くなった。

水野:それはみなさん的にはどうですか? 

上原:びくびくしながら出ていたのは本当にそうでした。本番前とか、袖にみんながいるのが嬉しくて嬉しくて。不安が少しでもそがれるから。

蓮見:初めて東京03さんのライブにゲストで呼んでいただいたとき、上原が紙コップをお盆に6個乗っけて出てくるというのがあったんですけど、空の紙コップだから手が震えすぎて全部ぶちまけてた(笑)。それでウケちゃった。

上原:無理ですよ。いきなり03さんの前でとか言われても。自分のお笑いが何なのかもよくわからないのに。…って考えると、ドキドキしながら立っている状態がちょっとずつなくなっている気はします。

水野:お互いの成長度をよくわかりあっていますよね。蓮見さんからすると、みなさんはどんどん本を越えていくんですか? 自分で書きながら、「こんな感じの芝居になるかな」とか想像しているわけですよね。

蓮見:えーっと…、「なめんなよ」って思うようなまったく越えてこないコントもあります(笑)。もっと読んでくれ! って。でも不安なコントで助けてもらうことが多いですかね。「ここの1分ちょっと弱いな」ってとき、読み方でカバーしてくれたり。最初の読み合わせで、こう読んでくれるならいけるな、みたいなのが増えました。

水野:これからどうなると思いますか? 今、めっちゃ楽しい時期だと思うんです。だけどさらに月日が過ぎて、みんなで大学時代からやってきたというストーリーさえも使えなくて、本当に作品だけで勝負しなきゃいけなくなったときに、どんなものが見えるのか、いつか聞きたい。

蓮見:僕は徐々に楽しくなっていく兆しがあるんです。こないだ、台本を書かないで流れでネタ合わせする、みたいなのが1回あって。それが僕はすごく楽しかった。「こうなって、こういうボケを入れたいんだ」って言って、それをみんなが笑って。じゃあどうやろうか、って口伝えしていった。その結果、ウケも良かったんです。これのほうが早いし、みんな楽だろうし、いずれ単独もそうやるようになったらかなり強いだろうなって思う。

水野:みんな重大な発表されたみたいな顔してる。

吉原:それができるようになったら、お笑いの側面も強くなる。8人いるからこその部分もあるだろうし。

園田:でも怖い。

飯原:セリフがないまま稽古が進む、みたいなときがあって。なんとなく自分で考えたことを言ったら、それが採用されてめちゃくちゃウケたんですよ。そのとき、こういう楽しさを実感しました。自分が思いついたことでお笑いが生まれる楽しさ。そういうのを経験せずに、蓮見さんが書いてくれたのをやってきたから。ここから成長して、個々で意見を出せるようになったら、みんなそういう楽しさを味わうんじゃないかなって。

水野:それめちゃくちゃパワーアップしそうですね。

蓮見:ネタを作る場において、8人いるのは強いですからね。

水野:しかも人間性がより出てくるだろうなって。即座に思いついた言葉を言ってウケたのは、飯原さんの自然なキャラが生々しく出たからだと思うんですよ。上原さんの緊張でお盆が震えちゃってウケたのも、やっぱり素が出ていたからで。それをフォローする上手さもみなさんにあったんだろうけど。だからより色濃くなって、もっとバンドっぽくなってくのかも。セッションっぽくなっていく。

蓮見:当て書きから入って、やれることや自分たちの手持ちが増えて、その手持ちを自在に使えるようになって、各々が自分自身の当て書きでネタ合わせに向かえるようになったときが最強だと思います。でも多分まだ15年ぐらいかかる。そう考えると先は長いし、楽しみはあるかなって思います。

水野:すげぇなぁ。壮大な物語じゃないですか。

「結婚とか子どもとか、マジでそっちの方を大事にしてくれよ」

蓮見:まぁ8人いるので結婚とかも挟まってくるんだろうし。今懸念しているのが、全員50歳になったとき独身だったらちょっと気持ち悪いかなって(笑)。

吉原:「それが本当にイヤだから、誰か結婚してくれ」って言うよね。

水野:やっぱり人生のフェーズの変化は、結果的にグループで背負わなきゃいけなくなりますよ。そうなったらより強くなるんだろうなって。僕もメンバーに子どもが生まれたり。子どもが生まれると覚悟が変わっていったり。歌が変わっていったり。

蓮見:そうですよね。

水野:あとリアルな話だけど、ずっとグループがいちばんだったじゃないですか。「これで成功したい!」って思っているから。でもそれがいちばんじゃない物語も出てくるから。それって素敵なことなんだけど、「どうグループでやっていこうか」って考えるときがあって。

一同:あぁー。

水野:ダウ90000はまさに青春真っ只中にいる気がするから、このあといろんな物語があるんだろうなって。

道上:蓮見さんは、「結婚とか子どもとか、マジでそっちのほうを大事にしてくれよ」ってすごく言うよね。

蓮見:もう好きにしてほしい。それで辞めるんだったら何も文句はないし。続けるとしても、「5年休みます」とかでも全然いい。結婚したいのに、こっちで我慢することがないようにしてほしいなと思います。

水野:めっちゃいいリーダー!

吉原:あんまりこういうこと言ってくれるグループのトップとかリーダーとか、過去にそんなにいなかった気がして。

水野:…今すごく反省しています。

蓮見:いやいやいや! バンドで3人はまた違う気がします。僕は脚本家になりたいという最初の夢もあるから。全員結婚してやめます!ってなっても、脚本家のほうに全部吹っ切っちゃうというのもなくはない。だけどバンドで、3人で、しかもあれだけ世に出たあとだと…。俺もそれだったらイヤだと思うし。

水野:山下(穂尊)って自由人で。あいつお酒が好きで、山小屋が好きで、脱退するとき山小屋に行きたいって言い始めたんですよ。

蓮見:あー! そうなんですか。

水野:まぁいろいろあったんですけど、このまま続けるとあいつの自由なスタイルを保てないし、僕らもそれを背負えない。だったら背中を押すしかないかなって感じだったんですよ。小学校のときから一緒にいるからこそ見えちゃうというか。残りの2人はやっぱり音楽に集中したいタイプになっちゃったんですね。

蓮見:なるほど。

水野:いつのまにか幼馴染がそうやって分かれて。でも今みなさんを見ていると、蓮見さんをみんな大好きだし、蓮見さんもみんなが大好きだし。奇跡のバランスだなって。だから…大事にしてください(笑)。

蓮見:何かで崩れないように。4:4で割れるのがいちばんマズいですね。

水野:女子、男子とか。

蓮見:ですね。うち、面倒くさいのが、男女でわりと性格が違うんですよ。女子のほうがサラッとしているというか…。

水野:強そうですよね。

蓮見:強い。強弱がいちばんわかりやすいかも。

水野:今日も女子がわーって笑っているとき、男子はすっごく頷いてるもん(笑)。絶妙なバランスなんですね。男女グループの難しさってあるじゃないですか。気を遣わなきゃいけないところもあるだろうし。感覚も違うし。だけどこの男子3人がいい地味さというか(笑)。穏やかさというか。誰もウェイ!って感じがしない。

飯原:欲望とかを全部失っているから。

蓮見:また全然違う話が出てきましたよ。それたまに言うよな。

飯原:欲しいものとか別になくて。

吉原:「お金こんなにいらない」って言うもんね。

水野:園田さんと上原さんは野望ないの?

園田:お金は欲しい。

上原:僕は欲望かどうかわからないですけど、友だちがいっぱい欲しい。

一同:(笑)。

上原:高校3年生の頃、クラスに友だちが1人もいなくて。

水野:よくそこからこうなりましたね!

上原:いや、その1年があんなにツラかったのに、それが大学4年間も続いたらもう帰ってこられなくなると思って。とにかく浮かないようにしようってついて行ったら、奇跡的にここにいるんです。

水野:8人組のグループやっていて友だちが欲しいってすごいですよ。

上原:この1年で芸人の先輩方とか気にかけてくださって、声かけてくださるんですよ。ひとと話すとか一緒にご飯を食べるとか、楽しいなと思って。しかもありがたいことに、すごい方々に会えるじゃないですか。そういう方々と友だちになれるかもしれないっていうのが嬉しい。それが欲望かもしれないですね。

水野:もしかしたらいちばん欲が深いかもしれないですね。果てがないですもんね。園田さん、野望は?

園田:お金があったら、僕は結婚したいです。

水野:なんで裏切らないキャラなの(笑)?

園田:お金がなくて今、お互い実家で暮らしているんですけど。彼女と結婚したいですね。

水野:いやぁー、わかりました。みなさんの素のままが舞台に出ているし、それを素のままで活かせるような本になっている。そして、それを素のまま活かせるようなコミュニケーションを日常でもされているからああなっているんだなって。まとめにかかっちゃったけど。

蓮見:いや、それを目指しているので、そう言ってもらえるのがありがたいです。40代50代の役者さんに技で勝てないなら、リアリティーで勝負するしかないと。今の引き出しをフルに開ける作業をするしかないと。そうやって日常の延長線上の本ばかりを作るようにしていたので。水野さんにそう言っていただけると、一応やってきたことが合っているということなんだろうなって。

水野:この対談が終わったあと、「あのひと変だったね」って言われたらどうしよう(笑)。

一同:いやいやいや!

水野:本当に今日はありがとうございました!

一同:ありがとうございました!

文・編集:井出美緒、水野良樹
撮影:西田香織
メイク:内藤歩 久木山千尋
監修:HIROBA
協力:ばぐちか

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