『Samsung SSD CREATOR’S NOTE』マルルーンさん【前編】

 ~未完成だから今、挑戦して、試しているところ~

J-WAVE『Samsung SSD CREATOR'S NOTE』
https://www.j-wave.co.jp/original/creatorsnote/

“いま”を代表するクリエイターをゲストに迎え、普段あまり語られることのないクリエイティブの原点やこれから先のビジョンなど、色々な角度からクリエイティビティに迫る30分。J-WAVE(81.3)毎週金曜日夜24時30分から放送。

編集を始めたのは小4から

水野:水野良樹がナビゲートしています『Samsung SSD CREATOR’S NOTE』今回のゲストは、映像作家のマルルーンさんです。よろしくお願いします。

マルルーン
2003年生まれ。武蔵野美術大学映像学科在学中。主にミュージックビデオを手がける。これまでにきゃりーぱみゅぱみゅ、SHISHAMO、アイナ・ジ・エンド等、多数のミュージックビデオを演出。2020年~2024年「映像作家100人」に選出。

水野:マルルーンさん、ラジオ初めてですか?

マルルーン:2回目です。めっちゃ緊張しています。

水野:改めてリスナーのみなさんにご紹介すると、マルルーンさんは様々な作品を作られていますけれども、いきものがかりの楽曲「運命ちゃん」のミュージックビデオを撮っていただきました。

水野:そこから派生して、今年のいきものがかり全国ツアー、ぴあアリーナMM公演のライブ映像も少し手掛けていただいたり。みなさんぜひ、YouTubeなどでチェックしてみてください。改めてビックリしたんですけど、マルルーンさんまだ学生さんなんですよね?

マルルーン:はい、そうです。

水野:おいくつですか?

マルルーン:今、21歳ですね。

水野:MVとか、あれだけ大人たちがたくさんいるじゃないですか。撮影現場は緊張されませんか?

マルルーン:いや、緊張しますよ。怖いですよ。眠れないです、いつも。

水野:えー、でも結構ちゃんと僕らに演技指導をしてくださって。すごく細かく。

マルルーン:ちょっともう…まったく覚えてないです。本当に緊張していて。

水野:「運命ちゃん」のMVは、映像がマルルーンさんのテンポ感というか、すごく細かい編集をされていますよね。編集作業はおひとりでやられているんですか?


マルルーン:ひとりでやりました。正直、めちゃくちゃしんどいです(笑)。

水野:あれ、実際どれぐらいの時間をかけるんですか。

マルルーン:「運命ちゃん」の場合は、1ヶ月くらいかけたかもしれません。もう冬休みはぜんぶ潰れたぐらい。

水野:「冬休み」という言葉が出てくるの、基準が学生時間でいいですね(笑)。もともと映像に興味を持ったのは、何がきっかけだったのですか?

マルルーン:まず、親がクリエイティブ関係の仕事をしていたのは影響していると思います。あと、昔から結構、映画とか特撮はよく観ていて。それが多分きっかけですね。

水野:観るだけではなく、作ろうと思ったのはどうしてでしょう。

マルルーン:家にハンディカムというファミリービデオカメラがあって。運動会とかを記録するような。友だちと「何して遊ぼうか」となったとき、そういうものを遊びの一環で撮り始めたのがきっかけですね。

水野:自分で編集もできるようになったのはいつ頃から?

マルルーン:小学校4年生ぐらいからかも。

水野:早い! 

マルルーン:Windowsに元から入っている、ムービーメーカーという無料の動画編集ソフトがあって。それを使って手探りでやってみて。

水野:クリエイティブな仕事をされている親御さんからは「あ、何かやっているな」とか「やめなさい」とか、言われたことありますか?

マルルーン:なかったですね。ゲームの代わりに、パソコンを買ってもらったりしたので、むしろ肯定的というか。その代わり、ゲーム機はまったく買ってもらえなかったです。

水野:作ったものは友だちとかに見せたりしました?

マルルーン:はい、昔はYouTubeにも上げたりして。

水野:小4から?

マルルーン:そうですね。

水野:それがやっぱり違うよなぁ。YouTubeに上げたら、世界に発信しちゃっているじゃないですか。コメントとか返ってきました?

マルルーン:返ってきて、「やばい、恥ずかしいわ」ってなって結局、非公開にしちゃったんですけど(笑)。でも当時は、そうやって公開して世の中に見てもらうことが楽しくてやっていましたね。

水野:褒めてもらうのが嬉しい、という感覚ですか?

マルルーン:そうですね。あと当時、“動画を作って上げる”ってまだそんなにやっているひとがいなくて。それで注目を得ている感じもありました。自分は誰もやってないことをやりたい、という性格なので。

完遂したときの達成感がめちゃくちゃある

水野:もう高校生の頃には、お仕事としての映像づくりも始められていたんですよね。どうやってきっかけを得ることができたんですか?

マルルーン:SNSですね。当時はやっぱりバズりたくて、そのためにたくさん動画をTwitterに上げていて。そうしたらそのうちの1本がすごく伸びて、そこからDMで連絡が来るようになりました。

水野:少しずつ自分の作品にコメントなどをもらえるようになって、「これで食っていこう」と思ったのでしょうか。 

マルルーン:そこまでは思わなかったんですけど、今求められているならやったほうがいいかな、と。自分にできるのも多分、これだけだなと思ったし。ひたすら作っていた感じです。

水野:自分自身の評価と、周りの言葉とでギャップとかありました?

マルルーン:はい。自分が作っていて「いい」と思ったものでも、まわりからしたらそうでもなかったり。でもなんか…ずっと作っていましたね。

水野:そう、飄々と作っている感じがするんですよね。まわりの言葉で揺らぐ感じがあまりしないというか。

マルルーン:そうですね。完遂したときの達成感がめちゃくちゃあるので。その快感はもう、誰に何を言われても関係なく。

水野:それは「完成した」と思うんですか? たとえば、僕らのMVでも延々と編集が続くじゃないですか。さらに僕らもリクエストを出しちゃったりするし。そうすると「これ、どこが完成なんだろう?」ってところもある気がして。

マルルーン:難しいところで、正直それを言ったらいくらでもできちゃうんですけど。でも、フルで観たときに「ああ、できた」と感じるというか。達成感を得ているのかもしれない。

水野:この番組では原点をまずお伺いしていくんですけど、マルルーンさんにとっては数年前のことですもんね。長く見積もっても10年前。するとまだ原点のなかにいるぐらいの感覚なんですかね。

マルルーン:そのとおりだと思います。まだまだ試している最中です。

自分としては、脈絡がないようである

水野:「運命ちゃん」のMVで、僕らいきものがかりが非常に特徴的な歩き方をするシーンがあるんですね。カクカク、カクカクと、自然ではあり得ないような動きをしながら、独特のリズムで歩いていく。あれはマルルーンさんがシーンを細かく編集しているんですけど。実はマルルーンさんの作品のいろんなところに、ああいう独特のリズムやカラーが出ていて。あれは作っていて、ぽろっと出てくるものなんですか?

マルルーン:そうですね。編集で試しまくっていたら、なんかおもしろいものができていた、ということが多いです。今回も、まぁ絵コンテを書いて、計画的にやってはいるんですけど、ああいう動きになるとは思っていませんでしたし。そこは仕事のたびに試している部分があるかもしれません。感覚的なところが大きくて、説明するのがなかなか難しいんですけど。

水野:説明といえば印象的だったのが、「運命ちゃん」のMVを撮る前に、マルルーンさんがすごく細かい絵コンテを用意してくださったじゃないですか。しかも1から100までめちゃくちゃ説明的な。で、すみません、失礼な言い方になってしまいますが、1から100読んでも理解できなかった(笑)。

マルルーン:(笑)。

水野:それで詳しくお話を聞きに行こうと、打ち合わせをさせていただいたら、マルルーンさんが本当に遠慮しながら柔らかい感じで、「いや…何がわからないのか、わからない」って(笑)。あれ衝撃的で。マルルーンさんのなかでは、イメージができているんだって。

マルルーン:伝わりづらいのは、もう今までずっとそうだったので。そうならないように今回は頑張って絵コンテを書いたんですけど、やっぱりわからないですよね。伝わらないんです。

水野:多分、僕らの想像が追いつかないんですよ。「運命ちゃん」のMVには、あばれる君がゲストで出てくださって。あばれるさんが“生命体あばれる”っていうものになるんですよ。その“生命体あばれる”がだんだん成長していって、空に飛び立って…って、もうわからない(笑)。

マルルーン:(笑)。

水野:僕らもMVを説明しようとするとこうなる。でも、マルルーンさんの頭のなかでは、どんな絵になるか浮かんでいて。それがすごいなって思いました。

マルルーン:脈絡がないですよね。でも自分なりにストーリーはあって。自分としては、脈絡がないようであるように作っているというか。そこがわかりづらい部分にはなっちゃうのかなと思いますね。

水野:でも「わかりづらい」という言葉で表現しちゃうんだけど、絵コンテを見せていただいたとき、すごく「おもしろい」と思ったんです。こちらは「僕らが想像もつかないようなものを作ってもらいたい」と思ってお願いしているなかで、まさに「このひとのなかではちゃんとストーリーがあるんだ」と気づかせてもらったときの新鮮な驚きというか。

マルルーン:もう、そう感じてくださっていたなら、めちゃくちゃありがたいし嬉しいです。

水野:でも、これをレコード会社の大人たちはどう捉えるのか、と(笑)。

マルルーン:だから、水野さんが現場で推してくださったと聞いて、本当に嬉しかったし、ありがとうございます。

水野:マルルーンさんは、今の自分に対してはどう思っていらっしゃるんですか? いいなと思っているのか。変わりたいなと思っているのか。

マルルーン:常に「変わりたい」とは思っているかもしれないですね。おもしろいことに積極的に挑戦していきたいですし。先ほども言ったように、まだ完成されてない感じもずっとあって。だから今、挑戦して、試しているところという感じですね。

水野:大学に通われていて。しかも仕事では大人たちと関わることも増えてきて。いろんなことがやってくるじゃないですか。自分に入ってくるそういう情報は、マルルーンさんにとってプラスですか?

マルルーン:めちゃくちゃプラスですね。とくに仕事で得る経験値はすごく大きいです。仕事ってある程度、追い詰められるものだと思うので、そのときにどうしても頑張らないといけないときがくる。そこで自分は成長しているのかなと思います。

水野:過去の作品を見たら、「ここ、こうしたらよかったのに」と思うことってあります?

マルルーン:あります。でも逆に、過去の自分でしか作れなかったものもあるなと思う。

水野:そこはどう思います? 寂しいとかって思います?

マルルーン:寂しいとも思います。でも圧倒的に、今のほうがいいものは作れていると思うので。寂しさもありつつ、もっといいものが作れればいいなと。

水野:いいなぁ。なんか、もっと一瞬一瞬のひとかと思っていました。

マルルーン:一瞬一瞬…。

水野:自分が変化していくことに無頓着なひともいるじゃないですか。毎回毎回の作品で「これがベストだ」と思っているひと。でもマルルーンさんは、自分のなかでの成長とか、変わっていくことに対してのポジティブな気持ちがあるんだなって。それは、このあともどんどん変わっていくんだという期待感になります。

マルルーン:僕は結構ネガティブだからこそ、意識して楽観的に考えていこうとしているのかもしれないですね。

J-WAVE Podcast  放送後 25時からポッドキャストにて配信。

Samsung SSD CREATOR’S NOTE 公式インスタグラムはこちらから。

文・編集: 井出美緒、水野良樹
写真:谷本将典
メイク:内藤歩
番組:J-WAVE『Samsung SSD CREATOR'S NOTE』
毎週金曜夜24時30分放送
https://www.j-wave.co.jp/original/creatorsnote/

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